国際漫画賞授賞式~マンガは国境を越える!
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「ポップカルチャー」は、文化外交の主要なツール
2月26日(金)の午後6時から、東京麻布台の外務省飯倉公館において、第9回「国際漫画賞」(International MANGA Award)授賞式及び山田美樹外務副大臣・政務官主催のレセプションが行われた。
現在、外務省では我が国に対するより一層の理解や信頼を図るため、従来から取り上げている「伝統文化・芸術」に加え、近年世界的に若者の間で人気の高いアニメ・マンガ等のいわゆる「ポップカルチャー」も文化外交の主要なツールとして活用している。この「国際漫画賞」は毎年名古屋で行われる「世界コスプレサミット」(外務省は実行委員会のメンバーで、優勝者には外務大臣賞を授与している)と並ぶ外務省ポップカルチャー文化外交の柱となっている。応募の多かった国・地域の第1位はタイで43作品
今回の第9回「国際漫画賞」(実行委員会委員長は岸田文雄外務大臣)には、46の国・地域から259作品の応募があった。応募の多かった国・地域は第1位タイ(43作品)、第2位台湾(35作品)、第3位ブラジル(34作品)である。
国際漫画賞の選考は「コミック出版社の会」メンバーが選考委員として第1次審査を行い、最終審査を国際漫画賞委員会のメンバー、里中満智子氏(漫画家・委員長)、倉田よしみ氏(漫画家)、志賀公江氏(漫画家)、廣田晃氏(漫画雑誌編集者)、藤田力氏(漫画雑誌編集者)が行った。
最優秀賞1作品、優秀賞3作品を含む受賞(入賞)14作品が選ばれた。入賞作品の国・地域別は台湾4、中国3、タイ2、イスラエル1、ベトナム1、ウクライナ1、ロシア1、コートジボワール1となっている。素晴らしい作品が多く順位をつけるのに苦労した
今回の応募作品の選考にあたった漫画家の里中満智子氏(「国際漫画賞」審査委員会委員長)は、「見ごたえのある素晴らしい作品が多く、順位をつけるのに苦労しました。しかし、それは辛い作業ではなく楽しい作業でした。私は漫画家ですが、審査をする時は1人の読者になります。続きを読んでみたい作品も多くありました。今回、改めて感じたことは、やはり“マンガは国境を越える”ということでした。地球上には、様々な国・地域があり、それぞれ、歴史や文化や価値観が違います。しかし、どの国・地域に住む人も、地球人として、どんなことが『楽しく』、どんなことが『悲しい』のかは共通しているのではないかと感じました」と全体講評をしている。さらに「マンガには国も地域もありません。どの地域で作者が描いても全世界の人が見ています。また過去も未来もありません。みなさんの作品が100年後も、200年後も読み継がれるように、私たち日本人ができることがあれば協力していきたい。一緒に頑張りましょう!」と受賞者にエールを送った。
大友克洋氏と葛飾北斎から多くのインスピレーション
最優秀賞はイスラエルで作品名は『The Divine』(原作者:ボアズ・ラヴィー、作者:アサフ・ハヌカ、トーメル・ハヌカ)。イスラエルからの作品が国際漫画賞に入賞するのは初めてのことである。そのあらすじは、「アメリカ人技術者が、政府の依頼を受け、少年ゲリラが住む山の爆破を試みるため、クァンロン(仮想国)に赴く。しかし、ゲリラを率いる不思議な力を持った双子ら少年たちとの触れ合いを通じ、一転、アメリカ政府と敵対することになる」というものである。
原作者のボアズ・ラヴィー氏は「この話は1990年代後半のミャンマーで12歳にして、少年ゲリラ団を率いて戦った双子兄弟の実話を参考にした。本作品を通じて、戦争における少年兵の問題に関心が生まれ、このように生活と自由のために戦う子供がいなくなることを願う」と語った。また「今回の作品を制作するにあたり、日本のマンガや芸術から多くの影響を受けたが、とりわけ、漫画家の大友克洋氏、葛飾北斎からは多くのインスピレーションを受けたと語っていた。
「水木しげる記念館」や「出雲大社」などを訪問
優勝賞の作品は、ベトナムから『Holy Dragon Imperator』(原作者:グエン・カイン・ズオン、作者:グエン・タン・フォン)、台湾からは、『魚を恐れる男』(作者:リー・ロンジエで、絵のみでセリフのないサイレントマンガである)と『無名歌Vol.1』(作者:ヤオグンマオロッキャット)の2作品が選ばれた。
授賞式に来日した5名は、これまでに日本のマンガ家などとの懇談、出版社等への表敬訪問を行っている。そして、受賞式後、鳥取県境港市の「水木しげる記念館」や島根県の「出雲大社」などを訪問して帰国の途につく予定である。
【金木 亮憲】
【注】「国際漫画賞」:大の漫画好きとして知られた麻生太郎現副総理(財務大臣・金融担当大臣)が外務大臣在任中の2006年4月に行なったスピーチ「今や世界各国に現れつつある若き漫画の旗手たちに、漫画の本家本元である日本から、権威のある賞、いわば漫画のノーベル賞のようなものをあげたい。日本との絆を、それによって意識していただきたい」と発言したことから外務省内で設立の検討が始まり翌2007年5月22日に正式に設立された。歴代実行委員会の委員長には外務大臣が就いている。
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