ドナルド・トランプ候補はなぜ「強い」のか(4)
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副島国家戦略研究所(SNSI)研究員 中田 安彦
ただトランプ候補は、宗教保守(福音主義派)と言われるキリスト教右派からの支持がどの程度あるのか未知数だったが、サウスカロライナ州での結果から、福音主義派の期待の星であるはずのクルズ候補(他候補者へのネガキャンがひどく、支持を落とし始めている)と対等に渡り合っていることから、この層からの一定の支持があることがわかった。
トランプは、有力な宗教保守からも支援表明を受けている。トランプは、クルズから聖書の一節を正しく引用していないと批判されたこともあったが、影響していないことは同州予備選で明らかになった。これから行われる予備選では3月1日、8日、15日と大きな州での予備選が行われる。共和党の公式の大統領候補者になるのは、全部で2,472人の過半数である1,237人の代議員を獲得する必要があり、日本の2月23日現時点では、103人が配分されている。3月15日までは各候補が獲得票の順に大統領候補の指名を受けるために必要な代議員(デレゲート)の数が比例配分されるが、15日のフロリダ州などからは最高得票者がすべての代議員を総取りする仕組みに変わる。
民主党は仕組みが少し違い、2,383人の代議員が必要だが、特別代議員(スーパーデレゲート)という党の有力者が予備選挙に影響されない特別票を持っているので、党内に強い基盤を持ち、基礎票で下駄を履かせてもらっているヒラリー・クリントンが圧倒的に有利である。共和党主流派から期待されているルビオ候補は、予備選後半戦に該当する穏健な州で強いと言われるが、3月15日までに常に2位につける一方で、代議員数を稼いでおかないと、後が続かない。それでも、クルズ候補も3月1日のスーパー・チューズデーが自らの地盤のテキサス州(大票田)での予備選があることから、勝負に出てくると思われる。
トランプ以外の候補は、トランプの勝ち逃げを防ぎ、手堅くそれぞれが選挙人を稼ぐことで、トランプ側に6月に指名候補を決定する党大会の前に過半数の代議員を獲得させない、という作戦を取るしかない。党大会までに決まらなければ、党大会での投票が行われるので、ここで主流派が根回しを行うことでトランプに勝つという戦略である。
しかし、トランプが躍進すれば、その必要もなくなってしまう。トランプ現象からわかることは、アメリカの政党政治は再び大変動の時期を迎えていると言えるかもしれないということだ。
まず第一には、一般大衆があまりにも合衆国議会を信用していないことである。2014年のギャッラプ社の世論調査では、アメリカ人の実に15%しか議会を支持していないと答えている。2002年には最高の56%を記録したが、ブッシュ政権の後半からオバマ政権にかけて、つるべ落としに下落している。
ちなみにレーガン政権時には、1986年に42%の1つの山を記録している。(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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