2024年12月24日( 火 )

米国利上げの世界経済へのインパクト(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 それでは、日本はどのような手を打っているのか――。

 黒田日銀総裁は1月29日に、日本で初めてマイナス金利を導入すると発表。今まで実施してきた量的緩和の延長として、マイナス金利を導入した。

kousaten_fukei マイナス金利とは、市中銀行が日銀の当座預金にお金を預ける際に金利を払うのではく、金利を取ると言う政策である。いくら量的緩和を実施しても、資金が市中に出回らず、日銀の口座に眠っていることを何とか防ぎたいという苦肉の策である。そうすることで、銀行は資金を貸し出しに回し、景気を活性化したいという狙いである。

 もう1つの狙いは、米国との金利差が開くことでドルが買われ、円が売られる円安を誘導することである。発表当時は、市場は当局の狙い通りに円安と株高になった。しかし、2日後からは日銀の予想とは裏腹に、円高と株安が進んでいる。日本は1,000兆円を上回る政府の借金があり、財政問題を抱えているのに、納得できない現象が起きているわけである。
 しかし、今の世界経済を眺めてみると、経済学の理論では説明できないほど、世界経済は深刻な問題を抱えているという証左でもある。ヨーロッパでは、ドイツ銀行の問題と難民問題で、不透明さが続いている。産油国でも、いつどこの国が破綻するかわからない状況になっている。それに中国は株価が暴落し、バブル崩壊は必至であると言われている。シェールオイル革命で回復しつつあると思われていた米国も、実は経済が堅調ではなく、ドルの凋落が噂されている。
 そのなかで、日本の円は信頼できる通貨として選ばれているという話である。

 最後に、韓国はどのような状況だろうか――。

 韓国銀行では先月、金利を上げずに据え置くと発表している。アメリカが金利を上げると、資金流出を防ぐため、金利を上げるのが普通である。しかし、韓国には家計負債という時限爆弾があるため、金利を上げたくても上げられない事情がある。だが、今は何とか踏ん張っているが、米国が追加の利上げをして金利の差が開くと、そのときは韓国でも金利を上げざるを得ない。いつまで踏ん張れるかが問題である。
 韓国経済のファンダメンタルは、以前とは比べ物にならないほど強くなっているのは間違いない。しかし、中国経済の失速により、輸出にも影響が出始めている。また企業が抱えている短期負債が他の国に比べて圧倒的に大きく、それが大きなリスクであると警鐘を鳴らす専門家もいる。

 アメリカは今後3年間で4%くらいの金利上げを実施していくと思われるが、0.25%上げただけでこれだけのショックがあることを考えると、今後、追加の利上げが実施されていいのかという気もする。原油価格の安定、金融市場の安定、新興国のさらなる発展などが、今後の世界経済の発展には欠かせない。

(了)

 
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