文化論としての「アキバカルチャー」!(2)
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インテグリカルチャー(株) 代表 羽生 雄毅 氏
「オタク」と違う概念であることを意識する
――前回はとくに解説をせずに「OTAKU」という言葉を使わせて頂きました。しかし、似たような意味を表すには「オタク」(“おたく”も含む)という表現が一般的です。なぜ、あえて「OTAKU」という表現を使うのですか。
羽生 私があえて「OTAKU」という表現をする意味は、「アキバカルチャーを楽しむ外国人」という意味でのOTAKUは、一般的にイメージされる「(日本国内の)オタク」と違う概念であることを皆さんに強く意識して欲しいからです。他意はありません。
「オタク」をどのように定義すべきなのかは分かりませんし、その内容に精通しているわけでもありません。社会一般的には、「オタク」とは、自分の好きな事柄や興味のある分野(マンガ・アニメなど)に傾倒しすぎる、そして、引きこもりをする人達のことを指す、と考えています。この見方について、1つだけ付け加えるならば、私は「“オタク”は“引きこもり”である」という考え方に、個人的には賛成していません。そうすると、日本には何百万人もの引きこもりがいることになってしまうからです。1980年代の日本のコミックマーケットにはすでにものすごい人数が集合していました。彼らは決して引きこもりではなく、積極的に創作活動を行っていたのです。
なぜ、私があえてこのようなことを申し上げるかと言いますと、「“オタク”は“引きこもり”である」という言葉が勝手に1人歩きし、そこにマスメディアが注目、「オタク」どころか「OTAKU」を巡る議論までもが、低次元、よこしまなもの、不毛なものになってしまうことを危惧するからです。
私たちは「デジタルネイティブ」なのです
――では、次に「オタク」と「OTAKU」はどこが大きく違うのでしょうか。「OTAKUネイティブ」とは、どのような人達ですか。
羽生 「OTAKUネイティブ」と言うのは、私が考え出した造語です。これを考えるうえで重要なのは、アキバカルチャーを楽しんでいるかという以前に、「OTAKUネイティブ」とは、子ども時代からインターネットやパソコンのある環境の中で育ってきた「デジタルネイティブ」でもあることです。そして、このデジタルネイティブで、アキバカルチャーを楽しんでいる人たちを私は「OTAKUネイティブ」と考えています。
日本製コンテンツを必要しなくなってしまう
マンガ・アニメとの向き合い方も、国内でこれまで一般的に言われてきた「オタク」とは大きく違います。マンガ・アニメはニコニコ動画などを通じてのコミュニケーションツールに過ぎません。もちろん、読んだり見たりはするので情報は交換します。しかし、その原作の内容に加えて、それを題材とした二次創作画像、改造動画、そしてさらにそれを題材とした情報交換や自己表現も楽しみます。
このことは、世界のデジタルネイティブにとっては、アキバカルチャーに代表される日本製マンガ・アニメは情報交換の題材となるコンテンツの1つに過ぎないことを意味します。将来的にも日本のマンガ・アニメが絶対的に優位性を保てる保証はどこにもありません。すでに、アメリカ製アニメの『マイリトルポニー』や同人ゲームの『アンダーテイル』が同じ土俵に上がっています。それでも、今のところは「アキバカルチャー」(日本製マンガ・アニメ)は充分魅力があります。しかし、私が最も危惧しているのは、日本国内で「アキバカルチャー」の文化論的な正しい理解が進まずに、コンテンツ展開の方法を誤り、日本のコンテンツが「OTAKUネイティブ」の話題から外れてしまうことです。彼らは来日して秋葉原に行くこともあると思いますが、それはショーケースとして見ているだけで、何か絶対的な「聖地」とは考えておりません。この点は、日本で従来言われる「オタク」とOTAKU、とくに最近の「OTAKUネイティブ」は全く違うので、文化的にはもちろん、ビジネスを考えるうえにおいても注意が必要です。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
羽生 雄毅(はにゅう・ゆうき)
インテグリカルチャー(株) 代表。
1985年生まれ。2006年オックスフォード大学化学科卒業。2010年同大学院博士課程修了。
在学中は科学ソサエティー会長やアジア太平洋ソサエティーの委員を務める。帰国後は、東北大学と東芝研究開発センターを経て2015年にインテグリカルチャー(株)を設立。日本初の人工培養肉プロジェクト「Shojin meat Project」を立ちあげる。その一方で、オックスフォード大学在学中から、2ちゃんねるやニコニコ動画のヘビーユーザーであり、帰国後も同人誌即売会やイベントなどの「オタク活動」を行っている。関連記事
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