2024年11月26日( 火 )

迷走する東京五輪の聖火台(2)

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 2020年の東京五輪開催が決まったものの、次々と大きな問題が浮上してきている。

◆2015年7月17日
 新国立競技場のデザインは既にザハ・ハディト案に決まっていた。しかし「キールアーチ」と呼ばれる約400メートルの巨大な橋梁状の構造が、建設費(2,520億円)と工期の観点から実現が極めて難しいという問題が判明。このため安倍首相はザハ案の白紙撤回を表明した。

◆2015年7月24日
 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委員会)は、佐野研二郎氏がデザインした五輪エンブレムを発表・公開した。しかしベルギーのリエージュ劇場のロゴに似ていると 指摘され、9月1日に白紙撤回されることになった。わずか一カ月半のうちに、2つの不手際が露見する事態となったのだ。

◆2015年8月28日
 安倍首相の意向を受けた関係閣僚会議は、新国立競技場の建替えについて新整備計画を発表。9月1日から「公募型プロポーザル方式」でのデザイン公募を開始した。

◆2015年12月22日
 関係閣僚会議は、提案のあったA案(大成建設・梓設計・隈研吾のチーム)とB案(竹中工務店・清水建設・大林組と建築家の伊東豊雄氏)のうち、日本スポーツ振興センター(JSC)の大東和美理事長が判断したA案を了承した。16年1月29日、JSCはA案の事業主体と約24億9127万円で、競技場整備の第I期事業(同年11月までに設計を完了予定)を契約。

<再度大きな問題点が浮上>

 新国立競技場建設計画はA案に決まり、順調に進むものと見られていたが、俄かに大きな問題がクローズアップされるようになった。オリンピックの象徴である聖火台の設置場所が決められないまま計画を進めていたことが明らかになったのだ。

◆2016年3月3日
 組織委員会は聖火台問題について、遠藤利明五輪担当相を座長とする検討チームを立ち上げ、5月の大型連休前をめどに設置場所などの案を出すこととした。翌4日の閣議終了後の記者会見で遠藤五輪担当相は「あまり議論されず、前の計画の段階で済んでいたのだと思っていた」と語った。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、聖火台を「大会の最も重要なシンボル」と定義。設置場所についても「スタジアム内の観客すべてから見える場所」「競技期間中はスタジアムの外からも見える」などと、詳細な条件を決めている。
 
 しかしここにきて、A案に聖火台の設置場所が盛り込まれていなかったことが判明した。場外設置は夏季五輪では異例。一方、場内に置くと屋根に木材が使われているため消防法に抵触するおそれがある。設計変更の場合、建設費がさらに膨らむ可能性も示唆されている。

(つづく)
【北山 譲】

 
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