迷走する東京五輪の聖火台(4)
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2013年(平成25年)9月7日、2020年の東京五輪の招致が決まった。オリンピックの開催国は、正式な開催決定から5カ月以内に、大会運営を担う組織委員会を設立しなければならないことになっている。
◆いよいよ東京五輪開催に向けて動き出そうとした矢先のことだった。猪瀬東京都知事が、東京五輪招致の栄光を掴む間もなく、「徳洲会5,000万円ヤミ献金疑惑」が発覚。12月19日、わずか1年で辞任する事態が発生。そのため一般社団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、東京への招致が決まってから4カ月を過ぎた2014年1月24日に、設立されることになった。3.11の「東日本大震災」から1年半。暗いニュースが続く中、復興へ取り組む日本にとってオリンピックは、一条の希望の光だったが、その運営にあたる大会組織委員会は、最初からつまずきを見せることになったのだ。(翌年の1月1日に公益社団法人に改組)
◆会長には安倍首相の意向を受けて、設立前の1月14日付で、森喜朗(元首相)の就任が決定していた。政界からは二人目となる。
初代は政治家の津島壽一氏だったが辞任し、1964年の東京五輪は安川第五郎氏。1972年の札幌は植村甲午郎氏、1998の長野は斎藤英四郎氏。いずれも財界人が会長を務めている。◆東京五輪の開会式(1964年10月10日)の前日夜半は雨。安川第五郎会長が「至誠通天」と、天に向かい晴天を祈ると、当日は雲一つない快晴になったとの逸話が残っている。
「至誠通天」は孟子の言葉。誠の心を尽くして行動すればいつかは天に通じ認められると言う意味が込められており、吉田松陰が松下村塾の塾生に送った言葉としても知られている。
また2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智氏も、「至誠通天」を座右の銘としていたと言われる。 東京五輪開催まであと4年。82歳となる森会長が、晴れの舞台に登壇する願いは天に通じるのであろうか。それとも蜃気楼に終わることになるのだろうか。<森会長の言動と周囲の反応について>
会長就任から1年半は静かな森会長だったが、次第にその存在がクローズアップされてくるようになる。森会長の言動と周囲の反応などを、時系列に取り上げていくことにしたい。◆15年7月17日
・安倍首相が新国立競技場のザハ案(建築費2,520億円)の白紙撤回を表明。すると森会長は「ロシアはソチ五輪に5兆円も使っている。東京都が施設にかけるお金は3千億円。国はたった2,500億円も出せなかったのかね。組織委が五輪にかけるお金はその比ではないのに」と不満を漏らしたと伝えられる。
さらに森会長は自身の報酬について聞かれ、「僕は無報酬。わずかばかりの議員年金は家内に渡してね」などと発言したという。年額670万円ぐらいと見られており、たった2,500億円の言葉を含め、庶民とかけ離れた金銭感覚に対して、批判の声が多く上がったといわれる。(つづく)
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