新幹線整備にブレーキ 長崎ルートは必要か(後)
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前門のリレー方式、後門のFGT
肝心のFGT量産化は2022年に間に合わない。試験走行で見つかったトラブルは軌間可変システムに関わる部品であり、その改善は容易でないとみられるからだ。25年春以降まで遅れるとの見通しが示されたものの、それまでに開発が成功する保証は全くない。確かにFGTは世界でも類をみない最先端の技術だが、他の新幹線と同じように他国へ輸出できる代物ではなく、北陸や北海道新幹線にも導入の動きがあるとはいえ、全線フル規格化してしまえば無用の産物だ。これをよく理解しているのが長崎県で、所要時間が1時間35分に伸びることを承知で「リレー方式」を受け入れたのだろう。リレー方式はかつて鹿児島ルートで導入されたもので、在来線区間をスーパー特急で結ぶやり方だ。鹿児島ルートはフル規格化が遅れた博多―新八代の工事が終わるまでの、いわゆる繋ぎだった。長崎ルートの場合はFGTの実用化までとしているが、国が「リレー方式」を提案してきた裏には将来の全線フル規格化があると期待するのも無理からぬことだろう。
一方、佐賀県はあくまでもFGTにこだわる姿勢を崩さない。3年遅れたところで、既に武雄温泉―長崎間のフル規格化工事を始めている長崎県と違って腹は痛まないからだ。しかし「リレー方式」が採用されると、武雄温泉駅に新幹線とリレー特急が対面乗り合わせをするためのホームを新設しなければならなくなる。そうなった場合に必要な追加費用は70億円とされており、新幹線建設のルールに従えば負担するのは佐賀県だ。同県は「リレー方式」を受け入れる条件として、ホームの建設費負担を国に求めている。どうあっても自分の身は切らない構えだ。これでは同県がフル規格化を受け入れる見込みはないといってもいいだろう。現在の整備計画における同県の実質負担額は約213億円だが、フル規格になれば約750億円の追加となり、5倍ほどに跳ね上がる。
都市計画に混乱の恐れも
いずれにせよ、長崎県側の工事は始まっている。すでに昨年末の時点でいくつかのトンネルがほぼ完成しつつあり、今さら止められる状況ではない。しかも長崎駅周辺では長崎ルートに加え、JR長崎本線高架化事業と土地区画整理事業が同時進行している。長崎県庁も駅のすぐ近くに移転することになっており、いずれは長崎市の新たな中心部として機能することになるだろう。停滞する長崎経済活性化の起爆剤として期待されていた長崎ルートだが、その役割を超えてすでに都市計画の根幹の一部となっている。しかし今回の事態は、国や国鉄(JR)の思惑に振り回されてきたとはいえ、無理に無理を重ねて長崎ルートの計画を進めてきたことのほころびではないだろうか。
あらためて問う。
「長崎新幹線は本当に必要なのか」
しかし、一度走り始めた列車はなかなか停まれない。(了)
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