迷走する東京五輪の聖火台(5)
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新国立競技場のデザイン案は、2015年9月から「公募型プロポーザル方式」で募集が始まり、3カ月後の12月にA案、B案が示された。その案に対する2020年東京五輪・パラリンピック組織員会の森喜朗会長の動きを追ってみることにしたい。
森会長の言動と周囲の反応について
◆2015年12月14日
・A案、B案が発表されると、森会長は「外観だけを見ると、B案がいいと思う。いかにもスポーツという雰囲気が出ている」とB案支持を明確にし、A案に対しては「まるでお墓のようだ」との感想を漏らすなど、決定前に圧力とも取れる発言は、大きな波紋を呼ぶことになった。◆12月19日
・「新・情報7daysニュースキャスター」(TBS系)で、ビートたけしは「森さんがB案と言ったときに、『(世論が)A案に流れるな』と、あのタヌキは思ったと思うよ。だからわざとB案と言ったんじゃないか」と、魑魅魍魎の世界を皮肉っぽく語っている。日本の建設業界には、談合と言う昔からのしきたりがある。今回はA案の企業群建設会社が落札の番だったと言われる。それに対して文教族の森会長が建設族に「待ったをかけたのでは」との声も聞かれるが、いずれも真偽のほどは定かではない。
◆12月22日
・日本スポーツ振興センター(JSC)はA案(大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏チーム)の採用を決定。総工費は約1,490億円とザハ案の2,520億円と比べると約1,000億円安くなった。完成は19年11月末。この日午前に開催された政府の関係閣僚会議(議長・遠藤利明五輪相)は、事業主体のJSCの決定を了承。結果は森会長が推すB案ではなく、A案だった。
安倍首相は「工期やコストなどからも素晴らしい案だと考えている。世界の人々に感動を与えるスタジアム、そして次世代に誇れるレガシー(遺産)にする」と述べた。
公表されたJSCの審査委員会の審査結果は、A案610点、B案は602点と接戦だった。敗れたB案の関係者にとっては、「森会長の発言がなければ」との思いがあったのではないだろうか。
森氏は2001年4月首相退任後、小泉、安倍、福田と、自ら領袖を務める派閥(清話会)から続々と総理を輩出。国会議員を辞した今も、キングメーカーとして自民党内に隠然たる影響力を持っていると言われる。
安倍首相はその恩義に報いるため、組織委員会の会長という、格好のポストを用意したものの、今は次々と問題発言を繰り返す森会長に、「辟易している」と言うのが、本音ではないだろうか。(つづく)
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