人吉で愛され続ける球磨焼酎の造り手、繊月酒造(後)
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繊月酒造(株)
高い品質の地域限定酒
「当社では、1998年頃から地域活性化のための限定商品を造っています。その中のひとつに『川辺』があります。球磨郡相良村のお米と、地域を流れる川辺川の伏流水を使った焼酎です。川辺川は、国土交通省の水質調査で9年連続1位に選ばれている清流です。『川辺』は、世界でも歴史ある米国ロサンゼルスのコンペティションで、焼酎部門の最高金賞をいただきました。それまでは、世界のコンペで“焼酎”のカテゴリーはなく、蒸留酒・スピリッツに分類されていました。初の焼酎部門で、初の最高金賞受賞が話題になり、全国から多くの取材が来て注文も増えました。しかし原料を限定しているので、質を落とさずに生産量を増やす努力をしないといけません。幸い、米焼酎は寝かしておいても、まろやかさが増すので、お米の収穫量が多いときに出来るだけ造るようにしています」(堤氏談)。
米焼酎は、酒造好適米やもち米などで醸造する蔵もあるが、繊月酒造では通常の食用米を使用する。また同社は、焼酎の銘柄により、米の産地や品種、水、貯蔵方法を変えるなど様々な試みを行ってきた。このような取り組みが、同社の焼酎をさらに魅力あるものへと成長させてきた。
伝統を受け継いで
「当社の社訓は、『原料のコストダウンをするな』です。つまり、米の質を落とさない。その昔、杜氏は、プロ集団が出稼ぎで蔵を回り、仕込みをしていくのが普通でした。蔵元は、販売と営業を行うことが役目です。しかし当社は、創業当初からある程度の規模があったので、経営者が専属の杜氏を雇っていました。杜氏が弟子を持ち、その弟子の中から一番技術を得た者が後を継ぎ、現在の杜氏で6代目です。杜氏の技術は育てられ、良いものを造るのは当たり前で、門外不出の高度な技術が受け継がれています。時代は変わり、タンクや蒸留器などの機械設備を導入し効率化している部分もありますが、一番大切な温度管理や、発酵過程の泡の出具合、香りなどを感じながら造る手法は、昔ながらの手造りです」(堤氏談)。
現在では、酒造りの全工程を機械化することができる。しかし一たび機械化してしまうと、人の手の技術は失われ、伝統が途絶えてしまう。
代々受け継がれてきた手法を守りながらも、新しいことに挑戦を続けてきた繊月酒造の酒造り。年中無休で蔵を開放し、見学と試飲ができる。試飲は、同社の定番酒「繊月」「峰の露」「舞せんげつ」「たる繊月」や、蔵のみで販売している長期熟成・樫樽貯蔵酒「無言」など、7~8銘柄がテーブルに並ぶ。定番酒以外の約20銘柄も試飲が可能だという。
人吉を訪れたときにはぜひ歴史を刻む繊月酒造の蔵を訪れ、この地の「水」と「米」からできた球磨焼酎を味わってほしい。(了)
【村重 珠実】<COMPANY INFORMATION>
繊月酒造(株)
代 表:堤 純子
設 立:1950年10月
所在地:熊本県人吉市新町1
TEL:0966-22-3207
URL:http://www.sengetsu.co.jp/index.html日刊マックス流通のご案内
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