2024年03月29日( 金 )

血液検査のパラダイムシフト(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 私たちは病気の有無によらず、日頃、健康診断などで血液検査を受ける機会がある。血液検査とは、血液によって血圧や血糖値、コレストロールなどの数値を把握し、体の状態を判断する検査である。最近の医療技術の発達は著しく、血液1滴でガンなども診断してしまう方法が発見されるなど、話題を呼んでいる。
 これまで初期のガンの発見に際しては、腫瘍が小さく、たとえば画像検査での発見は困難であった。そしてその後、画像検査によってガンが発見されたとしても、時すでに遅しというケースもたびたびあった。

tyusya_img しかし、兵庫県神戸市にあるマイテックという会社は、1滴の血液と3分間の検査時間さえあれば、ガンを診断してしまう画期的な方法を発見し、マスコミを賑わしている。この会社は、自社で開発したチップに血液を付着させ、ガン細胞が免疫細胞に攻撃を受けた際に血液中に溶け出る「ヌクレオソーム」というタンパク質を集め、それにレーザーを当てて、その量を判読することで、ガンの有無、ガンの種類、その進行ステージを識別する診断手法を開発した。たった1滴の血液で、手軽にかつ低コストで、ガンの診断に臨めるため、今後の活用に注目が集まっている。
 この手法は、世界的に権威のあるネイチャー誌にも掲載されたばかりか、今年1月にはNHKにおいても取り上げられた。2人に1人が、ガンで死亡する世の中であるだけに、この手法の今後に期待が寄せられている。

 上記のようなガン診断以外にも、血液検査は感染症やアレルギー検査などにも有効で、その活用範囲はさらに広がっている。診断に欠かせぬ血液検査は、病院で、注射針で血液採取をするのが一般的である。これは、静脈が見つかりづらく採血が繰り返される場合や、頻繁に採血に臨まざるを得ない場合、大変な負担である。慣れない注射、痛みをともなう注射、病院でのみ行われるという制約もあった。

 そうしたなかで、技術の進展とともに「微量血液検査」という画期的な手法が少しずつ世に浸透し始めている。微量血液検査とは、従来の血液検査とは違い、まさに血液1滴で、今までと同じ精度の血液検査をしてしまう方法である。血液を多量に採血せず、しかも注射針を使わないため、注射針が怖いという子どもや高齢者にも朗報である。それだけでなく、指先からランセットという器具を使って採血するため、静脈を捜す手間も省ける。微量血液検査は、簡便で、痛みはなく、低コストで、場合によっては病院まで行かなくても自分で採血できるというメリットがある。
 だが、これだけメリットの高い微量血液検査だが、まだそれほど普及してはいない。しかし、高齢化社会の到来、医療費の高騰、多忙を極める社会環境などで、今後、微量血液検査は血液検査の主流になっていくことだろう。即ち、「血液検査のパラダイムシフト」である。

(つづく)

 
(後)

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