「マイナンバーはプライバシー権侵害」~九州でも違憲訴訟提訴
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マイナンバー(個人番号)制度はプライバシー権などを侵害し憲法に違反するとして、福岡県、鹿児島県両県の住民14人が3月24日、国を相手取って、損害賠償などを求める訴訟を福岡地裁に提訴した。
原告らは、収集された個人情報が漏えいする危険、広範な分野の個人情報データの突合や成りすましの危険、監視国家となる危険などを挙げて、「マイナンバー制度は、プライバシー権を侵害し、個人情報をどのように使われるかについての自己決定権を侵害する」と指摘。個人番号の収集、保存、利用、提供の禁止と、国が保存しているマイナンバーの削除と慰謝料など1人あたり11万円の損害賠償を求めている。
同様の訴訟は、東京、大阪、神奈川など全国8カ所の地裁に提訴され、原告数は全国で486人(3月24日時点)。原告の石村善治・福岡大名誉教授は、提訴後の記者会見で、「人間の尊厳にかかわる行為には、積極的にかかわるべきだと思っている」と述べ、憲法学者としてドイツの言論の自由を研究した立場から「プライバシー、個人情報の保護、取り扱いが、日本とドイツでは格段の差がある」と警告した。
ドイツでは、ナチス時代に各人が番号を付けられ個人情報を洗いざらい国家が収集したことを教訓にして、戦後は、マイナンバー制度が違憲とされ、個人情報の保護が進められていると指摘。「戦前の教訓を知っているはずの日本で、(住基ネット導入に反対した時の)危機感が薄らいでいる気がする。再び国民が政府の言いなりになる手段として使わせないように取り組んでいきたい」と語った。会見した原告の男性(61)は、「いつの間にか12ケタの番号が付けられ、牛や馬と同じように扱われるようになった」と、マイナンバー制度を批判。米国のスーパーが顧客の購入品データから推測して、ある女子高校生が「妊娠している」と判断し、妊婦に必要な商品の広告を送りつけたように、国が集めた個人情報から個人の全体像が推測される危険があると述べ、「これは反対すべきだと思って原告になった」と話した。
原告弁護団は、誰しも知られたくない情報、隠しておきたい情報があり、丸裸にされたくないし、相手によって知られてもいい情報の範囲を自己決定する権利があることを指摘。広範な分野の個人情報が本人の知らないところで勝手に紐付けられ、どのように使われているか本人がコントロールできない制度は、「自己イメージ形成権」を阻害し、その結果、個人の自己決定に基づく行動を萎縮させ、表現の自由を抑制し、監視国家につながる危険があるとしている。
また、弁護団は、「『内定が決まったが、個人番号を出さないなら内定を取り消すと言われた』『証券会社から個人番号を提供しないなら解約すると言われた』など、内閣府がしてはいけないとしていることが行われ、民間企業や金融機関が、法律の義務の範囲を超えて過剰に対応して、国民に経済的不利益を課すような状態が起きている」と明らかにし、電話による無料相談「マイナンバー困りごとホットライン」を4月2日に実施すると発表した。ホットライン受付時間は、午前10時~午後3時。電話番号は、092-894-1781。内閣府番号制度担当室は取材に対し、「訴状の内容を見て、今後の対応を検討いたします」とコメントした。
【山本 弘之】
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