2024年12月23日( 月 )

城ガールが巡る日本の名城~天草の要害・富岡城(4・後)

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 熊本の天草には、白く美しいお城がある。
 富岡城は天草諸島の北西端・苓北町にあり、2007年に復元工事を終えたその姿には、どこか真新しさを感じる。今回は、空と海の「青」と、芝生の「緑」、城壁の「白」と、色彩豊かで美しい富岡城を紹介したい。

復元された城内

tomioka11 富岡城の復元は、「肥前甘艸富岡城図」を基に行われた。この図には、麓から石垣への距離、建造物の大きさといった情報が詳細に記されている。創作や、見栄え重視したお城の復元もあるなかで、富岡城は史実に基づいた正確な復元を行ったのだ。
 復元計画は1994年に開始し、2005年に完了した。石垣を始め、二の丸、二の丸長屋、本丸櫓などが復元され、二の丸長屋は苓北町歴史資料館、本丸櫓は富岡ビジターセンターとして利用されている。

 苓北町歴史資料館には、富岡城を再現した模型や、復元工事の記録、出土した陶器やマリア像、十字架などが展示されている。当時の天草四郎をイメージした服に身を包む西洋マネキンや、人骨の一部といった少し驚かされるものも展示されているので、是非足を運んでほしい。
 富岡ビジターセンターでは、天草の自然や海に住む生き物たちを紹介している。地元の子どもたちが描いた富岡城の絵など、ほのぼのとした展示物が多い。

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お城でのひとこま

 二の丸と櫓を堪能したあと、苓北町歴史資料館に入る。受付のおじさんに、「貴方以前も来なかった?」と聞かれ、「そうです。去年の9月に来ました」と答えると、「あーやっぱり」とはにかんだ顔で返された。「以前どこまで説明しましたっけ?展示物が増えたんだよ」と、新しく展示を始めたという薙刀と復元した鯱(しゃちほこ)に案内をされる。まだ歴史に疎い私に対して、一つひとつ丁寧に解説をしてくれた。

 おじさんにお礼を言い、資料館を出る。二の丸の隅に置かれたベンチに座り、城下の街並みを堪能してから、「富岡ビジターセンター」へ移動。
 移動した先には、先程のおじさん。思わず、「あれ?どうしたんですか?」と聞くと、「ここの担当さんがお昼休みだから、代わりに来たんだ」とのこと。おじさんの畑から連れてきたというヤモリを一緒に見たり、歓談したりと、少しだけおじさんと仲良くなれた。

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海を望む風景

 富岡城は、とても美しい城だ。麓から見上げると、青い空を背景に建つ白壁はまぶしく輝いている。
 城内は手入れが行き届いており、草木の緑もきれいだ。富岡城は、黄土色に近い色味の石と白い石で築かれた石垣と、褐色の石垣で築かれた石垣が混合している。石垣の色の違いで、築城された時代を知ることができるのだ。この石垣を見て回るだけでも、十分楽しめるお城だと思う。
 本丸から城内を見下ろした風景は、ことさらに美しい。復元された二の丸や櫓といった建造物、遠くには海。初めてこの風景を見たとき、その美しさに声を失ったほどだ。
 このすばらしい風景を見るために、また富岡城を訪れようと思う。

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(了)
【城野 円】

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