2024年12月19日( 木 )

韓国経済ウォッチ~なぜフィンテックに注目が集まるのか(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 ところで、金融産業はこれからも成長の余地はあるだろうか。需要の側面から考えてみよう。

kabuka たとえば携帯電話を例に考えると、わかりやすくなる。携帯電話は、所得が増えたからと言って、需要の増加が望めるものではない。年収500万円の人は、収益が仮に10倍の5,000万円になっても、携帯電話を10台持ったりはしない。また、食事などでも同じことが言える。収益が10倍に増えたからと言って、食事の回数を10倍に増やしたりもしない。もちろん、1食あたりの金額は増加するかもしれないが…。

 しかし、金融では話が違ってくる。余裕資金を100万円持っている人は、良い儲け話があれば投資をする。1,000万円を持っている人も、1億円を持っている人も、儲けのチャンスがあれば投資をする。「もう1億円を持っているので、私はこれ以上儲かる必要はない」とは、誰も言わない。むしろ資金の額が大きくなればなるほど、その投資家には情報が集まるし、チャンスも多くなるので、投資の需要は金額が大きくなっても減らない。
 このように、金融産業には需要の制限があまりないので、成長の余地はいくらでもある。それに先進国になればなるほど、苦労せず、楽して儲けたいという心理も働く。リーマン・ショックで金融産業に規制ができ、金融産業が萎縮してしまったことに対し、新しい技術で突破口を開こうとして誕生したのがフィンテックである。

 それから金融はある意味で、今までは一部の人が利用できた分野である。新しい技術を使うことで、今まで金融にアクセスできなかった人々にも金融を利用させようという狙いも、フィンテックにはある。IT技術を使うことで、今までより、もっと安く、もっと便利にしようというのがフィンテックである。
 それに、数年前から活用が始まったビッグデータ分析技術を金融に導入すると、新しい発見で、今までにない金融商品を開発できる可能性もある。さらに、アメリカではファンドの運用を人間の代わりに人工知能が担当し、人間より優れた結果を出している。

 このような状況下で、最近、フィンテック関連企業に投資される金額を見ても、フィンテックがどれほど注目されているのかがわかる。2014年の投資金額は34億ドルだったのに対して、18年には60億ドルになると予想されている。フィンテックは現在、年26%の成長率で成長をしていて、この新しい分野に遅れまいと、世界のいろいろな企業が参入をしている。

 それでは、フィンテックは現在、どのように活用されているのだろうか。
 「クラウドファンディング」というものを聞いたことがある方もいるだろう。会社の商品や事業内容をウェブ上で公開し、その事業の将来性に魅力を感じた個人から出資金を集める手法である。クラウドファンディングに成功した事例もかなりあるし、その募集をお手伝いすることを専門にする企業もいる。
 フィンテックとして一番利用が進んでいるのは、モバイル決済であろう。従来はクレジットカードを使う場合、カード読み取り機を加盟店が購入し、それを電話回線などにつなぐことでクレジットカード決済は行われていた。ところが、フィンテックを活用したモバイル決済では、携帯電話だけで決済ができるようになるので、とても便利になった。
 そのほかに、フィンテックの本命とも言われている「仮想通貨」を使えば、今までのような高い手数料や、銀行を介在しなくても送金ができるようになる。

 しかし、今までの既得権を握っている金融機関が、黙って市場を渡すわけがない。フィンテックが今後どうなっていくのかは、それをどう解決するかにかかっているとも言える。しかし、一部では、フィンテックの勢いは誰も止めることはできないとも言われている。繰り返される金融不安と通貨の限界を乗り越える方法として、フィンテックはこれからも間違いなく発展していくと個人的には思っている。

(了)

 
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