韓国経済ウォッチ~2次電池産業の勝者は?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
現代の生活は、電気に支えられていると言っても過言ではない。ところが、電気は需要を予測し、それに応じた量を発電するのが一般的である。しかし、予測の間違い、需要の変動などで、どうしても電気を貯めておかないといけない場面が出てくる。このような蓄電の必要性は、発電分野だけでなく、いろいろな場面で存在する。私たちの便利な日常生活になくてはならないIT機器も、蓄電したものが必要なのは言うまでもないし、これから大きな普及が予想される電気自動車にも蓄電は欠かせない。
今回は、電気を貯めて活用する分野のなかでも、2次電池に的を絞って、世界市場の現状と韓国企業の挑戦について取り上げてみよう。電池とは、化学反応などのエネルギーを、直接直流電流に変換してくれるものである。電池という日本語は、字のごとく「電子」の「池」と言う意味で、すなわち電気が池のように貯まっているということを表している。電池のなかでも、乾電池のように一度しか使えないものもあれば、充電して繰り返し使えるものもある。放電したら、電流を逆方向に流すことによって、何回も使える電池を、「2次電池」もしくは「蓄電池」「バッテリー」という。2次電池がなかったら、今のようなスマホの普及も実現しなかったかもしれない。
各種IT機器の普及で、2次電池産業も成長してきたし、2次電池はますます小型化、低価格化している。小型電池の市場では、最初は電池自体を発明した日本企業が、世界をリードしていた。
だが、2010年から三洋電機は、小型電池の世界1位の座をサムスンSDIに明け渡した。日本のエレクトロニクス企業の凋落とともに、小型電池においても韓国のサムスンとLG化学に追い越される。しかし、2次電池産業に新たな変化が起きようとしている。今まではIT機器が2次電池産業を牽引してきたが、これからは電気自動車向けの電池が成長も早く、2次電池産業の成長の原動力になるからだ。自動車はIT機器に比べれば、100倍くらいの電池が必要になる。しかし、今まで電気自動車は思ったほど成長をしていない。電気自動車が普及しない理由にはいろいろあるが、一番の理由は航続距離の短さである。
今の電気自動車は150km前後の航続距離しかなく、電池の交換問題、充電時間の問題が電気自動車の普及にとっての壁になっている。ところが、テスラモーターズが開発に成功した「モデル3」は航続距離が380kmで、従来の2倍くらいの航続距離を確保した。「モデル3」は中型セダンタイプであるが、予約開始2日間で27万6,000台の予約が殺到し、話題を呼んでいる。
フォルクスワーゲンのディーゼル疑惑の問題、今回の「モデル3」の人気などを考慮すると、今年は電気自動車が本格的に動き出す年になるかもしれない。
それに、環境問題を抱えている中国は、今までの自動車を生産していては、他の先進国を追い越すことは難しいので、むしろ電気自動車の生産・普及に相当力を入れている。補助金を支払うなどして政策の後押しもしているので、電気自動車が一番普及するのはおそらく中国だろう。(つづく)
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