2024年11月05日( 火 )

【熊本地震最前線レポート】(47)マンションが割れた?~専門家が建物構造を解説

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kumamoto_wareta 「マンションの渡り廊下に亀裂」。4月15日にショッキングなニュース映像が流れた。前日の14日午後9時半頃に震度5強を観測した熊本市中央区。13階建ての分譲マンションの渡り廊下に亀裂が入ったように見える映像だった。同マンションは熊本市中央区世安町にある「サーパス平成」(施工:穴吹工務店、SRC13階建て、総戸数89戸、1998年12月完成)。

 廊下は隣接する2棟の各階をつなぐもので、映像や写真を見る限り、地震により廊下が分断されたように写っていた。同マンションの住人らしき人物がツイッターで投稿し、「設計ミスか?」と瞬く間に拡散されたが、実はこの現象はマンション設計上のミスや地震に対する建物の脆弱さを示すものではなかった。これは建物に大きな圧力がかかったときに、衝撃の伝達を防ぐ「エキスパンションジョイント」と呼ばれる構造物だった。

 建物の構造設計に詳しい(株)九州構研の仲盛昭二氏は次のように解説する。
 「たとえば横長の建物を建築する場合に、電車の連結部と同じように隙間を空けて、地震による揺れを分散させたり、衝撃を吸収したりするのがエキスパンションジョイントの役目です。設計の異なる2棟の建物をつなぐ場合も同様で、その隙間を隠し建物のデザイン性を保つ金属のカバーを用います。これはごく一般的に用いられる設計技法で、今回の場合は地震により、その部分自体は破損しましたが、それにより衝撃は吸収されたと言えます。ですから、マンション自体が割れたのではなく、カバーが衝撃により、破損して外れたり、落下したことで、隠れていた隙間が現れたということです。他の部分も総合的に見ていかないと判断はできませんが、あの部分だけを見ると、建物の強度には関係ないと判断していいでしょう。
 ただ、つなぎ目部分の外壁が破損していることをみると、揺れによって左右の建物が衝突したと考えられます。そういう意味では、もう少し広く隙間を設けていれば、あれほどの破損は起こらなかったと思います。衝撃を吸収して、破損も起こらないというのが理想です」。

 
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