韓国経済ウォッチ~電気自動車は本当に普及するのか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
今、自動車業界には、大きな変化が訪れようとしている。各種IT技術の適用とセンサーの搭載や、人工知能などを活用した自動走行システムの実現が、現実味を帯びてきているし、自動車業界に、自動車メーカーだけでなく、IT企業であるグーグル、アップルなども、新しく参入しようとしている。それにもう1つの大きな動きは、電気自動車の普及において、今年はT型フォードの普及に匹敵することが起こるかもしれないとの期待が集まっている。
実は、電気自動車の歴史は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンよりも古い。一般的にはそれほど知られていないことだが、1899年~1900年のように、電気自動車の販売台数が、ガソリンエンジンの自動車の販売を上回った時期さえあった。しかし、1920年にテキサスで油田が発見され、ガソリン価格が大幅に下がったことと、内燃機関の大量生産による低価格化で、電気自動車はガソリン自動車に太刀打ちできなくなった経緯がある。
だが、数年前に電気自動車は長い眠りから目を覚まし、またガソリン自動車に挑もうとしている。しかし、電気自動車には今でもいろいろな課題があり、まだ期待通りの成長に至っていない。電気自動車の普及を妨げる3大要因として、「高い価格(電池が高価なため)」「航続距離の短さ」「充電インフラの不備」などが指摘されていた。しかし、米テスラモーターズの「モデル3」の登場など、電気自動車が普及しそうな活発な動きはある。2015年9月を基準に、新車の世界販売量に占める割合は、ハイブリッド車が1.3%で、電気自動車は0.9%になっている。今後の厳しい環境規制と、各国の補助金などを考慮すると、電気自動車は、今後もっと伸びることが予想される。
市場調査機関のIHSの見通しによると、電気自動車は、2020年に102万台普及すると予測されている。しかし、それ以上の伸びを達成する可能性も十分ある。テスラ社は今年の3月31日に「モデル3」を発表し、予約販売を開始した。驚いたことに、開始1週間で32万5,000台の予約注文があった。この予約販売台数を売上高に試算してみると、最大で140億ドル(1兆5,000億円)にもなる。
「モデル3」は、まるでiPhoneのような現象を引き起こしている。「モデル3」が、これだけウケた理由は何だろうか――。まずは価格である。テスラモーターズの今までのモデルは7~8万ドルと高価で、一般人の手の届くような自動車ではなかった。しかし、「モデル3」の標準販売価格は、3万5,000ドルである。ずいぶんガソリン車と対抗できるくらいの価格水準になった。その背景には、電気自動車価格の半分を占めていると言われる、電池価格の下落が影響しているだろう。電池価格は毎年8%ずつ下落していて、5~6年前と比べると5分の1くらいの価格になっているようだ。
次は航続距離であるが、「モデル3」は1回の充電で、350kmを走ると言われている。今の電気自動車の航続距離は、150km前後なので、2倍くらいに航続距離が伸びたことを意味する。9割のアメリカ人の1回の航続距離は、160km以下なので、航続距離も、これで十分だ。
最後に、充電インフラであるが、20分で50%を充電できる急速充電スタンド(Super Charger Stand)に行けば、無料充電ができる。こうした急速充電スタンドは現在、米国全土に102カ所設置されてあるが、テスラでは「今年中に米国人口の8割をカバーできるように、急速充電インフラを増やす」と約束している。(つづく)
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