韓国経済ウォッチ~電気自動車は本当に普及するのか?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「モデル3」以外にも、電気自動車が普及する理由は他にもある。
今、世界の原油価格は暴落しているにも関わらず、電気自動車は販売台数を伸ばしている。その理由としては、技術の発展で航続距離が長くなり、しかも価格が下がったことがまず挙げられる。今後、環境規制が厳しくなると、その規制にあった自動車を製造するよりは、電気自動車を生産したほうが、有利になることも十分予想される。ヨーロッパでは、2017年から環境規制がもっと厳しくなる。アメリカも同じような状況である。
中国も環境問題に悩まされているのはもちろんのこと、今までの自動車産業では優位性を確保するのが難しいため、電気自動車で世界をリードしようとしている。そのため中国では、電気自動車を購入すると、取得税が50%減免されるだけでなく、6万元くらいの補助金を受けられる。
また、3社で電気自動車世界シェアの8割を占めているテスラモーターズとBMWと日産では、充電網を共同使用するための協議をしている。これが実現すると、ユーザーにとっては利便性がさらに高まる。それでは、韓国の電気自動車市場はどうなっているのか――。
韓国は、電気自動車のコア要素である、自動車、電池、電力変換、IT技術のすべての分野において、世界的な競争力を持っている。電気自動車分野は自動走行、スマートカーなどと呼ばれる産業の前哨戦の性格を持つ。そのため電気自動車で失敗すると、自動車、IT、未来の自動車分野で、市場を確保できなくなる危険性がある。しかし、韓国は電気自動車においては、市場の形成にも、生態系の形成にも、失敗している。
また、このような産業の初期段階では、政府の政策がとても大事であるが、政府も電気自動車を積極的には育成していない。というのも、韓国のガソリン税率は10%だが、電気自動車が販売されガソリン車が売れなくなると、政府の大きな収入源の1つがなくなるため、どうしても政府としては消極的にならざるを得ないと言う指摘もある。韓国の電気自動車の技術は、先進国はもちろんのこと、最近になって、中国にも遅れを取るようになった。そのようななかで、韓国でのテスラの「モデル3」の発売も予定されているため、韓国のメーカーは困惑している。
現代自動車は、今までどちらかというと、水素自動車を未来の自動車と捉え、水素自動車の開発に力を入れてきた。しかし専門家は、水素自動車よりも電気自動車が先に普及することを指摘している。遅まきながら、現代自動車はLG化学と組んで、合弁会社を設立したりと、新しい動きもないわけではない。
サムスン電子も15年12月に、自動車の電装事業部を新設すると発表した。サムスンは、電池技術を中心に、IT技術を融合しながら、車載半導体をベースに電気自動車市場に狙いを定めているようだ。
一方、LGは電池とIT技術を融合しながら、自動車部品に狙いを定めているようだ。両社は部品メーカーにとどまるのか、それとも完成車メーカーになろうとしているのかは、今のところまだわからない。今後10年もしくは20年後の新しい成長エンジンになり得る電気自動車に、韓国ももっと力を入れるべきではなかろうか。
(了)
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