2024年11月23日( 土 )

イズミ、1兆円へ積極攻勢買収スーパーの再建急ぐ(中)

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収益源は家賃収入

aeon イズミも、GMS自体は儲かっているわけではない。収益の源泉はテナントから徴収する家賃。前期は家賃収入に相当する営業収入が単体で285億円あった。このほかに営業収入には計上されていない、テナントから受け取る売上差益が約170億円ある。専門店などのテナントの売上高は2,153億円で単体営業収益の37.1%を占める。イズミはテナントの売上金額を月末にいったん徴収し、翌月末に家賃として平均7.9%を差し引いたうえでテナントに返金している。テナント売上の7.9%に相当する170億円と営業収入の285億円を合計した455億円が実際の家賃収入となる。家賃支払いにするか、売上から引かれる方を選ぶかはテナントの判断に任せられているようだが、後者の場合、返金までの1カ月間、売上が入らず、資金的な余裕のない中小企業では難しい。

 単体の売上総利益(粗利益)が1,110億円に対し、販管費は1,112億円で差し引き2億円のマイナス。売上総利益にはテナントから徴収した家賃代わりの170億円が含まれるため、これを引いた商品売買による粗利益は940億円になる。つまり、本業の小売業はGMSに共通する赤字で、家賃・手数料収入で埋めたうえで利益を出す構造になっている。

 前期の営業収入は7.1%増えた。ゆめタウン以外に、新業態のNSCからも家賃収入が入り始めたことをうかがわせる。テナントからの家賃収入で稼げるのは、商業施設の集客力が高いためだ。

買収子会社の再建が課題

 17年2月期は出店が秋のゆめタウン徳山1店(店舗面積1万4,600m2)にとどまるが、前期出した新店がフルに稼働することや、ユアーズなどの連結子会社が年度を通じて寄与することから、営業収益は8.6%増の7,264億円に拡大する。

 営業利益は8.7%増の347億円、経常利益は8.7%増の338億円、当期純利益は12.4%増の211億円を見込む。

 課題は傘下に収めた子会社スーパーの収益改善だ。前期は(株)ゆめマートが営業利益を2.18倍の7億200万円と大幅に伸ばしたものの、スーパー大栄とユアーズは赤字だった。年商約90億円のデイリーマートは業績を開示していない。

 3月末閉鎖したスーパー大栄の「フレッシュ8(エイト)三苫店」(福岡市東区)。熊本市の生鮮ディスカウント・(株)鮮ど市場との提携による1号店で、これが起爆剤になり傾きかけていた業績が一時持ち直した。しかし、周辺に競合店が相次ぎ進出したことで売上が伸び悩むようになり、赤字に陥っていた。

 スーパー大栄の前期は決算期変更による14カ月の変則決算で、営業収益は246億8,600万円、営業利益は3億3,600万円の赤字だった。14年3月から15年2月の12カ月決算は開示していないが、経常損益は2億8,000万円、最終損益は約4億円のそれぞれ損失になった模様だ。

 イズミは2月、スーパー大栄を完全子会社化し、イズミとの一体運営で経営改革を加速する。
 今期は不採算店が減ることや、店舗の運営改善によるコスト削減が進むことから、経常利益は3億7,000万円とV字回復を見込む。不採算店は三苫店に続き、4月末浅川店(北九州市八幡西区)と福間店(福津市)を閉鎖、店舗数は14年2月末の30店から22店に縮小する。売上は品ぞろえの改善や営業時間延長などの効果が現れ、既存店では4.4%増と増加に転じる。売上高は200億円強を計画している。店舗運営の改善では、たとえば和日配の品ぞろえや陳列作業を問屋に任せていたのをやめ、自社に切り替えたことで、欠品の減少や利益率の向上につながっているという。

 今期で縮小均衡に終止符を打ち、情報システムを中心に投資を増やし、来期からの拡大に備える。6月から品ぞろえの改善が進んだ14店から店名をイズミグループの食品スーパー名である「ゆめマート」に変更、9月までに全店を終える。

 ただ、同様の方法で短期間に再建を果たした(株)西紅と(株)広栄(いずれもゆめマートに統合)と違い、地盤の福岡県内にはディスカウントストア店、ドラッグストアがひしめき競争は激しい。生鮮ディスカウントからの撤退で離れていった客に代わる新たな顧客層を開拓する必要がある。相次ぐ店舗閉鎖で低下している社員の士気を高めることも課題だ。

(つづく)
【工藤 勝広】

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