高いブランド人気と人口減少のジレンマ、地方創生に向けた糸島市の取り組み(前)
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糸島市長 月形祐二氏
糸島市は豊かな食や自然が人気を集める一方、人口減少が加速している現状に頭を悩ませている。隣接している福岡市は人口が増えている状況のなか、糸島市はどのような形で住みよい街づくりを進めていくのか。月形祐二市長に現状の課題と地方創生の取り組みを聞いた。
糸島市そのものをブランドに
――福岡市にも糸島産の食材を前面に打ち出した飲食店が増えていますね。
月形 私は、「ブランド糸島」の確立を公約に掲げ取り組みを進めています。これは、単なる地域ブランドづくりではなく、農水産物、自然、教育といった糸島のすべてをブランドとしてブラッシュアップするという考え方です。糸島が多くの人に注目されている要因としては、平成の大合併による効果が大きいと思います。旧市町の持つ魅力をひとまとめにして発信できるようになったことで、相乗効果が得られました。
食材で言えば、糸島市では海岸線、田園、中山間地域まで様々な環境があり、肉、魚、野菜から調味料までバラエティ豊かな質の高い食材が生産されています。一つの市でこれほどの種類の食材が揃うのは、他に例がないのではないでしょうか。
――平成の大合併は地方の衰退を招いたとの指摘がありますが、糸島市は逆に相乗効果が表れたということでしょうか。
月形 産業について言えば、合併後も農業や漁業の産出額はそれほど減っていません。糸島の産品が高い評価を受けることができたのは、合併による相乗効果が得られたこともありますが、従事者の人たちがプライドを持って質の高い本物を生み出し続けてくれたからです。
例えば、JA糸島が運営する「伊都菜彩」は、商品の品質管理にこだわったおかげで、年商約40億円と全国の直売所で1位の売り上げを誇るまでになりました。水産関係でも、恵まれた資源を生かし、天然マダイの水揚げ量が全国1位となっているほか、サワラも高級料亭が取り扱うほどの質を誇っています。また、国内では稀少となった純粋な和種のハマグリが市内で水揚げされていますが、これは、漁業者の皆様による徹底した資源管理が行われてきた賜物です。
こうした地道な取り組みが全国で認められ、東京の松坂屋や伊勢丹新宿店、高島屋などの百貨店が糸島産食材を販売してくれるようになりました。市としてもこうした魅力を知っていただき、首都圏を中心に積極的なシティセールスを図るために、民間委託で東京事務所サービスを行っています。一般的なアンテナショップを置けば職員を常駐させなければなりませんし、効果的に機能するまで時間がかかる難点があり、市の財政状況を考えるとコストもリスクも大きい。それよりも民間のノウハウを活用する方が短時間で効果が現れると考えました。
(つづく)
【文・構成:平古場 豪】関連キーワード
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