韓国経済ウォッチ~イラン発第2中東ブームは本物なのか?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国企業のなかでも、建設業界はイランの建設市場にかなり期待を寄せている。国内市場の飽和で、閉塞感に包まれていた建設業界にとっては、イランの建設市場は、新しい活路になるかもしれないからだ。
建設とともに、鉄鋼分野も期待が高い。韓国最大の製鉄会社であるポスコ(POSCO)は、韓国企業としてイラン進出第1号になる可能性が高い。ポスコは、イランの製鉄企業であるPKPが建設しようとする16億ドル規模の一貫製鉄所の建設に、参加しようとしている。
建設、鉄鋼だけでなく、すでにイランで成功している家電分野も、制裁解除後のイラン市場への期待を隠していない。韓国製品のイラン家電製品の市場占有率は、7~8割である。とくにLG電子は、イラン市場で奮闘している。LG電子は、地域の特性にあった製品開発で大成功を収めている。60度くらいの高温でも異常なく稼動するクーラーなどを開発し、現地で高い評価を受けている。
だが、イラン市場に対して、慎重論もないわけではない。今は穏健派が政権を握っているが、政局運営が強硬派の手にわたれば、核開発に対する態度が変わる可能性もまだ排除できない。そうなれば、今の計画は進まなくなる。
それに制裁が行われている間の欧米企業が身動きの取れないなかでも、中国企業はイランに進出し足場を固めている。とくに、中国は莫大な資金を武器に、鉄道敷設などでイラン政府に資金協力を約束している。イランは外資誘致で経済再建をしようとしているので、技術力だけでなく、資金力のバックアップは大事である。韓国企業は中国や日本、欧州勢に比べて、この資金力では見劣りする。
なお、イランのビジネスマンは「世界一タフ」という噂もあり、イランでのビジネスは簡単ではないようだ。イランは自動車市場としても、とても有望視されている。イランの新車販売台数は、年間100万台以上だし、今後も増加が見込まれているからだ。そのため、日本をはじめ韓国もシェアの拡大にしのぎを削ることになるだろう。
イランは、地政学的にもとても大事な場所である。たしかに、イランの政治が安定し、イランが成長し続ければ、第2の中東ブームが到来するかもしれない。一方、今回のマスコミの発表に接して、正直なところ、韓国では少し疑いの目を向けるきらいもある。なぜかというと、韓国の総選挙に惨敗し、今、大統領が窮地に立たされている状況で出た報道であるからだ。そのようなタイミングで、MOUを交わしただけで、実際に契約でもしたかのような報道振りに、何か思惑があるのではないかと思っている人もいる。中国経済の失速で、韓国は輸出も伸び悩み、岐路に立たされている。そのような時期に今回のイランの受注話は、いささかできすぎの感が否めない。
今回、朴大統領のヒジャブ(イスラム教徒の女性用ベール)姿は両国で評判になったが、そのような表面的なことより、イランで繰り広げられる熾烈な戦いに、どのような戦略で臨めば勝てるのか、これから真剣に検討する必要がある。資源開発には時間もかかるし、リスク要因も多い。イランが資源開発をすればするほど原油価格の下落を招き、資源開発が進まなくなるという側面もある。韓国企業としては、情報通信、医療、建設、鉄鋼など競争力のある分野を中心に、イランでの受注を確実にしていく必要がある。
現在、人口8,000万人近い巨大市場がまさに動き出そうとしており、その市場をめぐって世界各国が受注競争を繰り広げるのは、間違いないだろう。
(了)
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