2024年11月27日( 水 )

会見と報告書から見える舛添都知事の人間的「せこさ」(後)

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 グローバルネットワーク研究会(以下、研究会)の収支報告書には、天ぷら店「天冨良かんの」(東京都世田谷区)に対し2013年5月2日1万8,050円、同年8月16日1万7,700円、14年1月10日1万6,800円を飲食代として支出したことが記載されている。この計5万2,550円について、舛添要一氏は私的流用だったことを認めた。しかし故意ではなく、あくまで会計責任者の記載ミスであると主張。自費と政治資金を二つの箱にたとえ、領収書がある程度まとまると、それぞれの箱で領収書を処理していたが、記憶に混乱するなどして手違いが起こったと説明した。テレビ東京は会見の数日前に舛添氏が白紙の領収書をもらっていた疑いがあると報じ、同社の記者が会見で質問したものの、氏は「機械がプリントアウトした領収書の宛名の部分が白紙だったということ」と答えている。

 また画材・額装店「世界堂」(東京都新宿区)に対し、三つの団体から計178万4,154円を支出していたことについては、自身が外遊する際に相手先に土産として持っていく書や版画、リトグラフを額装するための費用であるとした。舛添氏が揮毫を依頼され、その書を額装することもあったという。収支報告書に額として計上しているのは研究会だけ。新党改革比例区第四支部は備品や消耗品、泰山会では事務所用品として処理しているが、氏によれば、これらも全て額装のために支出された費用であるという。

totyou 舛添氏は会見でも趣味が美術であることを認め、国際交流と自身のコレクションは分けていると主張した。趣味を仕事に生かすのは悪いことではない。だからこそ、誤解されないように徹底した峻別を行うべきだ。5月16日には、氏がインターネットのオークションなどで美術品を購入し、研究会から資料代として支払っていたことが報じられた。研究会の収支報告書を見ると、資料の中身は不明だが個人あての支払いがあったことが記されている。いくつかはアトリエなどに対する支出もあるが、そのうちの一つのギャラリーと書かれた住所をグーグルのストリートビューで確認したところ、無人と思しき荒れた木造家屋が映し出された。収支報告書の支出記載が13年2月4日で、ストリートビューの撮影は同年12月。映像を見る限り、わずか1年足らずでこれほど荒れるはずがない。一体これは何なのか。

 舛添氏が会見で口にすべきではなかったのは、ホテルや飲食店などに対する謝罪の言葉だ。自分としては迷惑をかけたことを申し訳なく思ったのだろうが、「メディアの取材が殺到したために営業できなくなった店もある」などと言われては、聞きようによってはメディアに責任転嫁している。「個人的にすべてを回って謝罪したい」と言うなら、実際に店まで足を運ぶべきだろう。純粋に政治家として説明責任を果たそうとするならホテルなどに会場を借りるはずだが、舛添氏は都庁での記者会見を選んだ。あくまでも都知事としての立場を貫こうとするなら、謝罪は都民だけに向けなければならない。自分が知事に就任する以前の政治資金も含んだ疑惑について、釈明する場を都民の税金によって設けてもらったという意識に欠けている。これは政治家以前に、人間として舛添氏の人格を疑わざるを得ない。かつて宮崎県知事を務めたタレントの東国原英夫氏も舛添氏の会見について、テレビ番組で「人間的にアウト」と発言している。東国原氏の師匠であるビートたけし氏が舛添氏を「せこい」と評したが、それが最も妥当な見方だろう。

 舛添氏は「疑惑を持たれたことについては深く反省する」としたものの、辞任は否定。2020年東京五輪を成功させ、「東京を世界一の街にする」と従来の主張を繰り返した。会見でも質問があったように、現在、東京五輪については招致に関わる不正疑惑が浮上している。舛添氏はこの支出に都は関わっていないと答えたが、次から次に問題が噴出する東京五輪への対応をいずれは考え直されなければならなくなるだろう。都が支出していなかったとしても、現実に裏金が存在した以上、知らぬ存ぜぬでは済まされまい。ここで舛添氏は太っ腹の対応を見せるべきではないか。都が率先して疑惑の解明に当たれば、舛添氏に張られた「せこい」という評価も少しは下がるに違いない。せこい人間にそんな度量があるかどうかは分からないが。

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(了)
【平古場 豪】

 
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