米大統領選、ドナルド・トランプのネオコン退治(前)
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来日し、5月17日夜に安倍晋三首相と会食をしたブッシュ前大統領は、ドナルド・トランプが「大統領になる可能性はフィフティー・フィフティーだと思っている」と語っている。ブッシュ前大統領といえばジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事の兄。米メディアではブッシュ家はトランプを共和党候補に指名する党大会には出席しないと表明している。そのブッシュ元大統領はトランプ大統領の可能性を五分五分と見ているということは重要だ。
前回、少し書いたが、ここに来てトランプが予備選挙で見せた外交・経済での過激姿勢を中和するようなコメントを相次いで発表している。けさ(日本では19日朝)もトランプが考える「11人の米最高裁判事人事リスト」を発表したが、これも共和党の支持層である保守派を納得させるものだった。ロイターとのインタビューで「金正恩と会って直接交渉してもいい」と述べたことが永田町関係者の間で話題になったが、このインタビューでは前に表明した「イエレン議長交代論」について軌道修正を図っているともみられるコメントもしている。
別の場所では、過激な政策については「私の言っていることは提案にすぎない」と、急激にトーンダウン。さらに、ロイターでは金融規制法については、ウォール街に寄り添う共和党の主流派を安心させるようなコメントをしている。総じて、ロイターのインタビューはその内容を見ると極めてまっとうな見解を述べている。反トランプ陣営も私の予想通り腰砕けになっている。
(参考:http://goo.gl/gNKyWv)
返す刀で「荒れる党大会」になりそうなのは、ヒラリー・クリントンの民主党のほうだ。無党派から熱狂的な支持を集めるサンダースの支持者が、ネバダ州の党大会で「代議員の配分方法が平等ではない」などと不満を述べ、同州の党大会を混乱に陥れたと報道されている。また、暴走したサンダース支持者らが同州の党幹部の女性に対し、「暴力を匂わせる」留守番電話やメッセージを大量に送りつけたことが民主党首脳部から批判されている。
このまま行けばヒラリーはカリフォルニア州の予備選挙で指名を確実にする。この時点でサンダースが素直に引くのか、サンダース本人が引くとしても、支持者が納得するのか、という問題が出てきている。予備選で亀裂した党内の融和への懸念があるのだ。共和党はこの亀裂を急速に修復している。このような状況のなか、私は、「ドナルド・J・トランプという人物を米大統領選挙に踊り出させたことを米国の支配層はどのように利用するか」ということを考えてみたい。重要なのは「ブッシュ王朝」をトランプが阻止したことと、ブッシュ候補に群がっていたネオコンと言われるタカ派集団の面目をトランプが潰したことだ。
ネオコンは、元は反共タカ派で今は中東への民主化を推進する暴走した思想家集団である。これが軍産複合体と結びついて、中東での無謀な戦争を推進していた。共和党内部には反ネオコン派もおり、その代表格がブッシュ父大統領の時代のジェイムズ・ベイカー元国務長官だ。トランプは5月はじめにワシントンの党首脳詣をした時にベイカーとも所属の弁護士事務所で面談している。
(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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