「ビンタた」ミスすると殴り合う異常空間(後)~筑後リサイクル店殺人事件
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被害者らの死亡を隠ぺい工作?
日高氏と元従業員男性の2人は、2004年5月下旬、6月下旬と相次いで死亡したとされるが、日高氏らの母親や交際相手らは、知佐被告人から「2人が家出して逃げた」などと聞かされたり、日高氏の携帯から送られたメールを見せられたと証言した。
証言から浮かび上がってくるのは、日常的に殴りあわせる暴力支配と精神的服従の構図だ。
両被告人は、4人が相次いで死亡したにもかかわらず救急車も呼ばず、逆に遺体を夫の実家に埋め、数年後に掘り返して骨を砕いて川に流すなど、隠ぺい工作を行った。
両被告人の海外渡航による時効中断がなければ、殺人罪も時効が成立していた。
遺体が発見されなければ、“完全犯罪”目前だった。殺人罪で起訴に至ったのは、4人も不自然に死亡した事件への捜査機関、検察側の執念ともいえる。検察側は、冒頭陳述で、従業員に対する暴力が常態化し、商品や事務所に汚れ1つ残さないような清掃や礼儀作法などを厳しく徹底し、深夜までの長時間労働が行われ、被告人が満足する行動をとらないと、大声で怒鳴りつけたり、みずから暴力を振るうとともに、伸也被告人に指示して従業員に暴行を加えたり、従業員同士に殴り合せていたとした。
問題は、そのような環境で被害者らはどのように死亡したのか、そして殺人罪が成立するか否か、だ。
検察側は、日高氏殺人事件について、元従業員男性の死亡後、暴行によって衰弱していた日高氏に対し、閉じ込めるなどの支配下においたうえで、暴力を繰り返し、生きるのに必要かつ十分な食事を与えず、ケガなどに対し適切な治療を受けさせず、そういう虐待行為を行えば「死ぬ危険性が高い」と認識し、死んでもいいと思って、虐待行為を行った、としている。また、被告人2人の関係について、元従業員は証人尋問で「知佐が上だと思っていた。たまに伸也も知佐から怒られていたから。伸也が知佐に土下座しているのを見たことがある」と証言した。
伸也被告人が証人として証言…殺意、共謀どう語る
死亡と被告人の行った行為との因果関係、殺意の有無、両被告人の共謀の有無、知佐被告人の指示などが争われている。物証は乏しい。死因をめぐっても、遺体は骨の一部しか発見されていず、通常と同じ意味での死因も特定できていない。検察側は、証拠上認定しうる死因は脳ヘルニアか、外傷性ショック死か、その両方の3つに限定されていると判断している。弁護側は、あくまでも「かもしれない」という可能性に過ぎないという立場だ。
知佐被告人の公判は、5月24日までに6回を重ねた。検察側は知佐被告人の公判でのべ27人(実数24人)の証人尋問を実施する。2人の公判は、別々に審理され、5月30日まで日高氏殺人事件を集中的に審理し、その後傷害致死事件などの審理が行われ、6月9日結審予定だ(伸也被告人の審理は6月27日初公判の予定)。
殺人罪が成立するか否か、判断が注目されるなか、殺意や謀議をめぐって鍵を握る証人として、伸也被告人が法廷で証言。証人尋問は、前半の日高氏殺人事件の山場に入った。
(了)
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