2024年11月27日( 水 )

熊本復興ニュース(3)~九州新幹線の驚異的な復旧力

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

yatusiro 九州新幹線・鹿児島ルート(博多-鹿児島中央間、256.8km)は2016年3月12日、全線開通から5周年を迎えた。沿線各地は、祝賀ムードに包まれ、今後さらなる発展と進化に期待を寄せられていた
 だが、その約1カ月後の4月14日以降、群発地震「平成28年(2016年)熊本地震」が発生し、最大で地震規模マグニチュード(M)7.3、震度7に達する地震群が、甚大な被害をおよぼした。九州新幹線も大きなダメージを受け、新幹線が走る熊本市や玉名市で、震度6弱を観測した。その後も連日、震度3程度の地震が継続して発生した。

 この地震で、熊本駅から南の熊本総合車両所へ向かっていた九州新幹線の800系車両(6両編成)が、駅の1.5km南で脱線。回送車だったため乗客はいなかったが、48車輪のすべてが脱線した。さらに、新玉名─熊本間などで、営業運転中の列車3本が緊急停止。不幸中の幸いで、乗客にケガなどの被害などはなかったものの、九州新幹線は全線で運休した。
 その後、段階的に運行が再開され、4月中には全線で復旧。九州道および熊本市内を中心とした幹線道路、橋梁など、輸送のインフラ復旧が急ピッチで進められ、1週間から10日前後の短期間で整備され、走行可能となった。

 九州の大動脈である九州新幹線は、精密な耐震設計がなされていたが、橋脚や防音壁など約150カ所で損傷を受けたとされる。とくに新玉名―新八代の区間でそれらが集中していた。
 想定以上の被害の大きさで、早期の復旧が絶望視されたなか、JR九州は他地区のJRの応援もあって、地震発生からわずか13日で全線復旧を実現。改めて我が国の建設の技量の高さが証明された。

yatusiro2 その一例が新八代駅である。同駅は、ホーム下のコンクリート柱の根本が粉々になるほどの被害を受けた。もし、再び震度6~7規模の地震が発生すると、倒壊する危険もあった。
 そこで、同駅の工事を手がけた九鉄工業(株)は、いち早く高架をジャッキで支え、基礎コンクリートを修繕・修復する工事を実施した。同駅の復旧工事について、同社の土木担当は「この震災が発生したことを機に、新八代駅のホームをより良くして、修復させていきます」とコメント。その他の路線においても「新幹線の高架へ迅速にジャッキで支えて、復旧工事に全力を注いだ。この迅速な対応で、被害を最小限に抑えられた」(熊本県内の建設業代表)としている。
 過去の大震災(阪神、東日本)を教訓とした対応であった。

【河原 清明】

 

関連記事