仮想通貨は通貨革命を引き起こすか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
最近話題になっている「フィンテック」のなかで、とくに“仮想通貨”という耳慣れない単語がニュースなどに頻繁に登場するようになった。仮想通貨について、名前を聞いただけでは、ピンとこないし、その意味するところを正確に理解するのは、もっと難しいかもしれない。ところが、ビットコインに代表されるこの仮想通貨は、今後、私たちの日常生活を大きく変えるような可能性を秘めている。
人類は、文明初期は貝を貨幣として使い、その後、金や銀を、それから今の貨幣を使うようになった。ところが、インターネットが発達することによって、電子的な取引が多くなり、日常的に貨幣を使う機会は段々減り、貨幣に対する認識と要求も変わってきている。
このような時代の流れのなかで、最近浮上しているのが仮想通貨であろう。仮想通貨は、まだ通貨としての認知度と信頼度は低いものの、その可能性はますます拡大している。今回は、仮想通貨の代表格であるビットコインを中心に、ビットコインはどのようなもので、今後、どのような可能性と課題を抱えているのかを取り上げて見よう。
専門家の予想によると、2016年にビットコインの価格は、上昇することが予想されている。それだけでなく、ビットコインを決済手段として取り入れるインターネットショップやリアル店舗も増加している。
ビットコインが初めてマスコミを賑わしたのは、おそらく14年2月であろう。ビットコイン取引所を日本で運営し、ピーク時にはビットコイン取引の約8割を占めていたマウントゴックス社が事実上破綻し、東京地裁に民事再生法の適用を申請したという衝撃的な事件が起きた。マウントゴックス社はハッカーの攻撃により、5億ドル相当の85万ビットコインと顧客が預けた資産が消えたと発表した。この事件により、ビットコインの信頼は失墜。人々はビットコインに、否定的なイメージを持つようになった。
しかし、最近になって、日本で米中合弁のビットコインの新しい取引所の開設が噂されているし、米国でも取引所ができ、取引額が増加している。
では、ビットコインは、どのような背景で誕生し、誰がビットコインをつくったのか――。
ビットコインは08年、サトシ・ナカモトという日本人名のプログラマーが発明したことになっている。このサトシ・ナカモトは仮名で、実際の名前と正体はまだベールに包まれたままで、実際はどのような人物なのかについては、まだ明らかになっていない。そのうえ、それが個人なのか、それとも組織なのかも、まだ不明である。
ビットコインは複雑な数学の方程式を解く方法で、暗号を解読し、その補償としてビットコインが与えられる。ところが暗号解読は、高性能のコンピュータを数台使っても6カ月以上時間を要する大変な作業である。それに暗号が解読されるたびに、難易度は上昇し、ビットコインの発行量が増えることは、なかなか厳しくなっている。それに加えて、ビットコインの補償は、4年を周期に半分ずつ減ることになっている。12年11月には50ビットコインが補償されたが、16年7月の補償は25ビットコインになる。
このように、ビットコインの発行量には制限が加えられている。ビットコインは既存の通貨のように量的緩和策によって、いつでも通貨量を増やせるような通貨ではない。このような性質によって、ビットコインの価格は上昇しやすいものとなっている。
ビットコインは、最初に登場した時期である09年には、1ビットコインあたり5円くらいだったが、13年11月末には1,200ドルまで上昇したことがある。その後、前述の取引所の破綻でビットコインは暴落したが、騰落を繰り返しながら、値を戻しつつある。
なお、今まで暗号解読によって発行されたビットコインの合計は、大体1,500万くらいである。(つづく)
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