定食店「大戸屋」で、社長再任に創業家が反対!(後)
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窪田社長が実権を掌握
久実氏の死をきっかけに、窪田健一社長と久実氏の長男、智仁常務との対立が表面化する。
窪田氏は1954年2月28日、山梨県生まれ。東洋大学法学部を卒業。食品スーパーの(株)ライフコーポレーションを経て、96年大戸屋(現・大戸屋HD)に入社。FC営業事業部長、国内事業本部長などを歴任。2012年4月大戸屋HDの社長に就いた。会長の久実氏が海外に軸足を移し、米国進出の陣頭指揮を執っていた。久実氏が後継者と託したのが、長男の智仁氏だ。89年3月9日生まれ。中央大学法学部政治学科卒業し、11年4月に三菱UFJ信託銀行(株)に入行。2年後の13年4月、大戸屋HDに入社。1年後の14年8月、執行役員社長付に就任。その1年後の15年6月の株主総会で常務取締役海外事業本部長に就任した。社長付から序列4位の常務に大抜擢だ。
久実氏が力を入れている海外事業で実績を上げさせて、智仁氏を後継者に育てるシナリオだ。久実氏があと4~5年存命だったら、そうなったかもしれないが、智仁氏が常務に昇格させた1カ月後に他界した。ここから首脳人事の迷走が始まる。智仁氏に社長の座を奪われることを危惧した窪田社長は、智仁氏の追い落としに動く。
15年11月6日、大戸屋HDは取締役人事の異動を発表した。専務取締役管理本部長兼経営企画部管掌の濵田寛明氏はヒラ取締役に降格、海外事業本部アジア地域担当への担当替え。常務取締役海外事業本部長だった智仁氏のヒラ取締役の降格と香港事業部長への担当替え。代表取締役社長の窪田健一氏が、海外事業本部長を兼務した。
15年6月の株主総会時点では、久実会長、窪田社長、濵田専務、智仁常務の序列だったが、半年後には3人が取締役から姿を消し、窪田氏がナンバーワンのポストを掌中にした。窪田氏の圧勝である。16年2月、智仁氏は「一身上の都合」を理由に取締役を退任した。
取締役を追われた人物が次々と復帰
窪田社長は自己の体制を盤石にするために、6月23日の株主総会で、取締役を総入れ替えする人事を断行する。創業家につらなる取締役はすべて切り捨てた。濵田寛明取締役海外事業本部アジア地域担当、高田知典取締役海外事業本部米国事業部長は退任。社外取締役3人、監査役3人も退任。
再任は、窪田社長、山本匡哉(まさや)・国内事業本部長、田中信成・商品開発本部長の3人のみ。社内取締役5人、社外取締役3人は新任だ。久実会長に取締役を追われた人々が復帰した。日本リースオート(株)出身で14年6月まで取締役だった土橋久一元副社長。三菱信託銀行(株)(現三菱UFJ信託銀行(株))出身で15年6月に取締役を退任していた水流(つる)博之氏は1年で帰り咲き。三菱信託銀行出身で、会長を務めた後、相談役最高顧問に退いていた河合直忠氏も取締役に復権する。
智仁氏はメイバンクの三菱UFJ信託で修行したが、三菱UFJ信託OBが次々と復活。三菱UFJ信託が智仁氏より窪田氏に軍配を上げたことが、勝負を決めたようだ。窪田氏は6月23日の株主総会で、創業家を排除した取締役人事をどう説明するのか――。けだし見ものだ。
(了)
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