営業スタイル一新し、高収益続く地場杭打ち業者(後)
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末広産業(株)
杭屋は儲からない?
同社の業績の劇的な改善には、驚くばかりだ。過去の業績を見てみると、2000年代初めは売上高4億円から5億円台を推移。最終利益もわずかで、かろうじて黒字を確保する状況にあった。当時は資産背景も乏しく、急激な業績悪化が起きれば、ひとたまりもない、そんな時代を生き抜いてきた。
そして、その状況を改善すべく、佐藤代表が踏み切ったのが、前述した営業スタイルの一新である。12年3月期までは、増収基調にありながらも、利益率は依然低調に推移していた。佐藤代表が営業スタイルを変更したという13年3月期以降は、一気に売上高は10億円を超え、利益率も大幅に向上している。毎月の経費が約600万円かかることを前提に、毎月収支を計算し、単月でも黒字になるように受注活動を展開している。
売上増加と利益率向上により利益を確保し、内部留保の改善が進んでいる。15年3月期は自己資本比率約40%、現預金の増加により、流動比率、当座比率ともに200%を超えている。有利子負債はやや増加しているが、借入金依存率は30%未満で問題のない水準。16年3月期は、売上高15億8,000万円に対し、税引き後利益4,320万円を見込んでおり、引き続き業績は好調。17年3月期も売上高15億円はすでに視野に入っており、大きな計画の狂いはない模様。かつては薄利で、内部留保もままならない状況にあったが、近年財務状況は劇的に改善されている。
この業績好調を理由に、新社屋の建設計画があり、約4,000万円の投資に踏み切った。完成移転は夏を予定している。銀行が社屋新築を提案してきたように、金融機関からの信用は厚い。同社の抱える課題を挙げるとすれば、やはり人材面。業績好調である現状を維持していきたいところだが、佐藤代表が抜けた際にその穴を埋めるのは容易ではない。九日会でも絶大な存在感を示していることから、代表交代が同社に与える影響は大きいとみている。
関係者が語る不思議
同社について、ある設計事務所は次のように語った。
「佐藤社長と直接お会いしたことはありません。営業に来られたのは、専務と社員。工事屋さんなのに、自社のことを『商社』と呼んでいたのが印象に残っています」。たしかに筆者も、佐藤代表と対面した際に、自社のことを「商社」と呼んでいたのを覚えている。だが、同社の状況からその意味がわかる。現社屋は平屋で、それほど広いとは言えない。駐車場も数台停められるスペースがあるだけ。従業員は役員を除きわずか4名ほどで、保有する重機も本社周辺には見当たらない。つまり、受注のその多くを二次下請けに任せ、現場で実際に施工しているわけではないようだ。先の設計事務所も人が少なく、同社の事業規模はそれほど大きくないと思っていたそうだが、同社の業績を教えると驚いていた。
また、あるゼネコンの工事部は「数年前に仕事をお願いしましたね。そのときは、スポットで依頼をいただいた設計会社の推薦でお任せしました」と語る。たしかに営業スタイルは、営業先をゼネコンから設計事務所へと変更しているようだ。訪問した日は、先客がおり、どうやら金融機関のようだった。明るい話が聞かれており、銀行への融資の相談というより、銀行からの融資のお願いだと推測できた。これだけの利益を残している絶好調の同社。金融機関はつかんで離すことはないだろう。
同社の現状をさらに詳しく知るために、入手可能な福岡市発注工事の情報を収集した。過去3年間で、同社が施工に関わった、請負金額1,000万円以上の工事を調べてみると、興味深いデータが浮かび上がってきた。ここにも同社の劇的な変化をもたらした要因があるのではないかと推測する。
現在、調査中のため、読者には今しばらくお待ちいただきたい。(了)
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