COMPUTEX 2016 ~日本とアジアを結ぶ架け橋・沖縄(中)
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沖縄県商工労働部情報産業振興課長 盛田光尚氏
台北で「COMPUTEX Taipei 2016」が5月31日から6月4日の5日間にわたり開催された。今年で36回を数え、同ICT(Information and Communication Technology)国際見本市は中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)と台北市コンピュータ同業協会(TCA)の共催で行われ、アジア最大規模を誇る。近年、県単位で展示ブースを構える沖縄県、来台中の商工労働部情報産業振興課の盛田光尚課長に聞いた。聞き手は沖縄・公立大学法人 名桜大学 清水則之名誉教授である。
いまだ十分でなく、自立型経済構築は道半ばです
清水 今回はちょっと台湾を離れて、沖縄県の経済に関して、過去、現在、未来の視点から教えて頂けますか。
盛田 1972年に、沖縄は戦後27年間の米軍政権下から日本に復帰しました。しかし、日本に復帰した当時の沖縄県の姿は、本土各県と大きく違っていました。各種社会資本整備に大幅な遅れが見られるほか、本土各県に例を見ない基地依存型輸入経済と称される経済構造となっていたのです。一部の食品産業を除いて、モノづくり、特に工業製品などについては皆無に近い状態でした。
これらの課題解決のために、すなわち沖縄を本土並みにするために、3次30年の「沖縄振興開発計画」で社会資本整備を中心とした格差是正、「沖縄振興計画」で民間主導の自立型経済の構築が日本政府主導で図られました。今日、これらの沖縄振興施策の積み重ねによる、社会資本の整備、就業者数の増加、観光産業の成長などを通じて、総じて沖縄は着実に発展してきています。 しかし、1人当たりの県民所得の向上、失業率の改善、島嶼経済の不利性の克服はいまだ十分でなく、自立型経済構築は道半ばにあります。
不利とされてきた沖縄の特性が逆に有利なものに
一方、今は国内だけに目を向けていれば、経済が成り立つかというと、そういう時代ではありません。アジアや世界に目を向けて、視野を拡げることが重要です。そのように考えた場合、今まで不利とされてきた沖縄の特性が逆に、有利なものとして捉え直すことができることに気づきました。
例えば、沖縄は日本で唯一の亜熱帯性気候にあり、1年を通じて観光(日本No.1の海洋リゾート地で、年間観光客数は2015年で約794万人)に最適です。人口は143万人(2015年)ですが、合計特殊出生率は1.94で国内最高であり、年少人口も17.5%で国内最高です。人口増減率は東京に続いて第2位(0.4%)になっています。
さらに、沖縄を中心に、飛行時間4時間以内(国内24路線、海外10路線)で、円を描くと、東アジアの主要都市のほとんどが入り、人口20億人のマーケットが出現します。そして、これらのアジア諸国との親和性、交流は初めてのことではなく、遡ればすでに、琉球王国時代には、すでに行われていた歴史もあります。
沖縄では今、これまでの振興政策の成果及び発展性を生かすことによって、アジア及び世界との国々とつながって、日本が世界に貢献する一翼を担い、自立発展していく素地が整えられつつあります。
「沖縄県マルチメディアアイランド構想」を策定
清水 飛行時間4時間以内に、20億人のマーケットが出現するのは素晴らしいことです。盛田課長の管轄する情報産業振興(ICT関連)の現状について詳しく教えて頂けますか。
盛田 先に申し上げましたように、沖縄県は本土復帰以降、3次30年に亘る「沖縄振興開発計画」とその後の「沖縄振興計画」に基づき、各種の施策を総合的に実施してきました。
情報通信関産業連分野においては、1998年に沖縄がマルチメディアにおけるフロンティア地域となり、21世紀の新産業創出及び高度情報通信社会の先行モデルを形成することを目指し、「沖縄県マルチメディアアイランド構想(MMI構想)」が策定されています。
「あるべき姿」を描いた「沖縄21世紀ビジョン」
さらに2010年には、沖縄の20年後の「あるべき姿」を描いた「沖縄21世紀ビジョン」が策定されました。県民が望む将来像を目指し、2012年に策定した「沖縄21世紀ビジョン基本計画」においては、情報通信関連産業を観光と並ぶリーディング産業と位置づけました。今、沖縄を日本とアジアを結ぶ「ITブリッジ」の拠点として、国内外に評価される産業の量的拡大と高付加価値化に戦略的に取り組んでいます。
同じ12年9月には、基本計画の着実な推進を図るため、「沖縄21世紀ビジョン実施計画」を策定、情報通信関連産業分野においては、「情報通信関連産業の立地促進」や「県内立地企業の高度化・活性化」等の施策を展開しています。国内外でのプロモーション活動による企業集積の促進や、高付加価値な情報通信技術・サービスへのビジネスモデルの転換などに取り組んでいるところです。
MMI構想の後継として、「おきなわSmart Hub構想」
さらに、13年には、沖縄21世紀ビジョン実施計画で示した計画の方向性や施策について情報通信関連産業が継続的に発展するための基本方針として、MMI構想の後継となる「おきなわSmart Hub構想」を策定しました。より一層の企業・人材・知識の集積を促進し、新たな価値を創造するとともに、アジアをはじめとする海外への戦略的展開を積極的に推進し、日本とアジアを結ぶ、アジア有数の国際情報通信ハブ(Smart Hub)になることを目指しています。
これらの施策により、沖縄の情報通信関連産業全体の生産額は(15年1月現在)3,974億円となりました。コールセンター分野、ITインフラ分野及びソフトウェア開発分野が生産額を大きく牽引しています。沖縄の情報通信関連産業は、観光リゾート産業に続く、沖縄の成長のエンジンとしての役割が期待されております。
(つづく)
【文・構成:金木 亮憲】<プロフィール>
盛田 光尚氏(もりた・みつなお)
沖縄県商工労働部情報産業振興課長
沖縄県出身。1985年沖縄県庁入庁。沖縄県土木建築部、観光リゾート局、知事公室、商工労働部企業誘致主幹を経て東京事務所勤務。その後、商工労働部情報産業振興課基盤整備班長、東京事務所企業誘致対策監を歴任し、2016年4月より現職。関連記事
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