2024年11月18日( 月 )

韓国発断熱革命!発泡ポリウレタンに新技術(3)

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室温40度の倉庫の中で冷却・断熱機能のチェックが続けられている。外壁に水滴はついていない<

室温40度の倉庫の中で冷却・断熱機能のチェックが続けられている。外壁に水滴はついていない

 環境に悪影響をおよぼすガスを用いるか、それとも高価だが環境に影響をおよぼしにくいガスを用いるか――。同社が行き着いた答えは、そのどちらでもない。解決のカギは、“水”にあった。
 イ・ソンホン博士が研究していたのは、「水発泡ポリウレタン」。ポリウレタンの発泡剤として水を用いる方法のものだ。技術としては決して新しいものではなく、以前より柔らかいポリウレタンには用いられてきた。それを硬質ポリウレタンに応用させようというのが、イ氏の研究だった。

 金社長とイ氏の出会いは、まさにニーズと技術の邂逅であった。金社長は三顧の礼をもってイ氏を迎え入れ、同社の技術開発は一気に加速した。

 環境負荷が極めて低い“水”を用いた同社の発泡ポリウレタンには、それ以外にも優れた特徴がある。

 まずは「断熱性能」。たとえ環境負荷が低くとも、断熱性能が劣っていれば使用するにははばかられる。その点、同社製品は従来の発泡ポリウレタンよりも断熱性能を3割以上高めることに成功。また、冷凍車の断熱パネルは、これまで数枚のパネルを接着剤でつないで用いてきたため、接合部分から冷気が漏れ出して冷凍効率を落としてしまうという弱点があった。それを同社の技術であれば、冷凍車に用いるパネルを各面1枚で賄うことが可能となり、冷気漏れを防ぐことに成功。これらの特性により、冷凍車に用いる断熱パネルの厚さを、従来の100 mmから55mmへと薄くすることにもつながった。その断熱性の高さは、冷凍車の外壁(外側の空気に触れる部分)に結露が発生しないことからもわかる。

 次に、「難燃性」。本来、ポリウレタンは可燃性のため、燃えにくくすることはポリウレタンの可能性を広げることにもつながる。金社長は冷凍車の断熱材としてポリウレタンの研究を行ってきたが、ポリウレタンの用途はもちろんそれだけではない。断熱のほか、遮音、クッションなど、さまざまなシーンで活用できるのである。だが、やはり可燃性の問題もあり、これまでは建築資材などの用途としては限られてしまっていた。
 その問題を、リード社の技術はクリアした。たとえば同社製品をガスバーナーであぶると、普通ならば火がついて燃えてしまうところ、同社製品はただ黒く焦げていくだけ。さらに時間をかけてあぶっても、焦げたマシュマロのように部分的に穴が開くだけで、火がついて燃え広がることはない。これは大きな利点と言える。冷凍車に用いる場合でも、万一の事故の際に被害を最小限に抑えることが可能になる。

 さらに、「コスト」面だ。個別のものなので一概には言うことができないが、従来のガス発泡式ポリウレタンに比べて、コストダウンが可能となっている。たとえば3tの冷凍トラックの場合、断熱材を用いた箱の部分の価格は一般的に450万円程度かかるとされるが、リード社の技術であれば300万円程度に引き下げることができると金社長は言う。

(つづく)
【柳 茂嘉】

 
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