東ヨーロッパには何があるのだろう(2)
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リトアニア・ヴィリュニス
ヘルシンキから約90分、年間乗降客約300万人のヴィリニュス(ORO UOSTAS)国際空港。到着ロビーは何となく暗くさびれた感じがする。1950年前後に建てられたということだったが、1950年といえば当然、ソ連時代の建設ということになる。それを現在までそのまま保っているのか?もしそうなら、キューバの現役クラシックカーのようなものだ。逆に出発ロビーは近代的な作りなのだという。簡単な通関手続きでターミナルビルの外に出る。
十数台のタクシーが客待ちをしているターミナルの正面玄関は日本の地方都市の鉄道駅然とした感じだ。ヘルシンキ経由で日本からの飛行時間は10数時間。しかし、中世の歴史を色濃く残すこの国を訪れる邦人は一日平均40人程度という。もちろん、夏場は平均よりずっと多いし、気温が低いというより、昼の時間が極端に短い冬場のそれは皆無に近いのだろう。ここでも平均が意味を持たない。
空港からバスで10分も走ると市街地に入る。そんなリトアニアの人口は300万人に満たない。空港の乗降客数とほぼ同じだ。国土面積は6.5万平方km。海から300kmの内陸にある首都の人口は約54万人。全国民の6人に1人が首都に住んでいることになる。北海道より狭い面積に300万人足らずの人口だから人口密度は46人、日本一人口密度の低い北海道よりさらに20人も少ない。そのせいか首都とはいえ、ホテルに向かうバスの窓からの見る通りには行きかう人もまばらだ。全体的に物静かな街の印象。ジョギングする人、徒歩で旅しているらしい人、アルコールの瓶を抱えて歩く人、自転車に乗る人。道行く人々の顔には何となくしんみり、もの静かな感じが漂っている。
首都とはいっても市街地は中心部から10キロ四方程度に収まるヴィリュニス。当然、高層ビルを目にするのはごくまれだ。一人当たりのGDPは1万5,000ドル余り。人口が少なく、経済環境もけしていいとはいえない。平均賃金は7~8万円。平均がそうだから中央値以下の低所得の市民には個人的インフラを改善する余裕は無いに等しい。だからここでは所によって時間が止まっている。建物や道路など我が国ではすでに消えてしまった戦後レトロがここにはいたるところに生き残る。
車窓から目にする市民の住宅の多くが見るからに古く、使い心地が悪そうなイメージの外観を残している。暮らしてみないことには分からないが、市内中心部の住宅は古いものが少なくなく、そこには暖房用の煙突が見える。燃料は薪か石炭か。札幌よりはるか北、イルクーツクよりさらに緯度の高いヴィリュニス。真冬の気温が時には氷点下20度になることもあるこのあたりのことを考えると少し気の毒な気持ちにならなくもない。そんな家には窓にカーテンのない部屋も少なくない。ただでさえ少ない人口のこの国から、経済的な事情でいま若者が他国に流れ出ているという。EUに加盟してからこのかた、その傾向が強くなったらしい。
(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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