まるでピサの斜塔!?天神・大名地区の傾斜した教会(前)
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昨年、横浜のマンションが、杭施工の不備により建物が傾斜した問題が話題になった。傾斜した建物と言えば、世界的にはイタリアの「ピサの斜塔」が有名であるが、何と福岡市の中心部に位置する大名地区に、ピサの斜塔のように傾斜した教会があることが発覚した。構造設計一級建築士の仲盛昭二氏に話を聞いてみた。
東側に100mm傾斜の異常な状態
――実際に傾斜した教会を見られたそうですが、どのような状態になっていますか。
仲盛昭二氏(以下、仲盛) 傾斜している教会は、福岡市中央区大名1丁目の、天神西通りから少し西に入った、建物が密集した場所に立っています。建物を道路側から見ると、明らかに東側に傾いていることが肉眼でもわかります。傾きを計測したところ、東側に100mm傾斜していました。
ここは、福岡県西方沖地震の発生より以前に、建物購入前の現所有者の依頼により、この建物を設計・施工した超大手ゼネコンT工務店が傾きを計測しており、その時点で30~40mmの傾きが確認されましたが、T工務店からは「安全性に問題ない」と報告を受け、現所有者が建物を購入した経緯があります。現時点での計測では、100mm傾斜しているのは、おそらく西方沖地震の影響もあるかと思いますが、傾斜が3倍程度も進行していることは異常な状態であり、今後も傾斜が進むと思われ、常に危険な状態です。福岡に大地震が発生した場合、倒壊の恐れが高いと考えられます。早急に撤去しなければ、近隣へ被害がおよぶことになります。
警固断層の真上に位置する警戒すべき地域
――天神大名という地区は福岡市の中心部であり、大型の建物が軒を並べ、九州で最も人通りが多い場所です。この地区の地盤というのは、どうなっているのですか。
仲盛 大名地区は、福岡の活断層として有名な警固断層の真上にあります。2005年の福岡県西方沖地震では、大名地区の多くの建物が被害を受けました。この教会も、この地震により傾斜が大きくなったと考えられます。
福岡県西方沖地震の発生を契機として、福岡市は今後の地震に備えて、「揺れやすさマップ」というものを作成し、市民や建築関係者に注意を喚起しています。
この傾斜した教会は、揺れやすさマップ中の赤色で示された「警固断層地震が発生した際に震度6強が想定されるエリア」のなかにあります。このエリアの建物は、警固断層地震が発生した場合、「耐震性の低い鉄筋コンクリート建物では倒壊するものがある」とされています。このため福岡市は、このエリアに建物を建築する場合は、地震力を1.25倍に割増すよう、条例で定めています。それほどこの大名地区は、地震に対して警戒をすべき地域なのです。(つづく)
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