グリーンレジリエンスで減災~国土強靭化に必要な自然資源(中)
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中山間地域の復活が地方創生に直結
国土強靭化の1つである「グリーンレジリエンス」は、地域ごとの生態系が持った「頑健性」と「回復力」を活かし、防災機能として活用する点に最大の特徴がある。わかりやすい例で言えば、森林が緩衝材となって山の土砂崩れや海岸の風や砂を防ぐことが挙げられる。
これは単なる防災機能だけでなく地域経済にも貢献する。森林が増えれば増えるほど、製材工場などが必要となり林業の発展に活かせるからだ。
またCLT(Cross Laminated Timber)と呼ばれる集成材をつくる企業も増えてきた。最近では、太陽光発電に代表される再生可能エネルギー関連で、木質バイオマスも注目され出した。CLT製造過程で生じる木質チップを活用すれば、バイオマス発電で雇用を生み出せるのだ。
たとえば高知県では、人口減少に歯止めがかからず、09年までは右肩下がりだった。産業振興計画をスタートし、アベノミクス効果もあって回復傾向にはなったものの、尾崎正直高知県知事は「経済規模の縮小で若者の県外流出が起き、過疎化・高齢化の同時進行による孤立が生じ、中山間地域が衰退する。そして少子化が加速し、さらなる人口減少を招くという負のスパイラルに陥っている」と講演のなかで訴えた。
このスパイラルは高知県だけではなく、全国にまたがる大きな社会問題だろう。尾崎知事は中山間地域の対策が地域経済に直結するとして、林業分野の展開で木材・木製品製造品出荷額を14年の204億円から25年には256億円まで伸ばす方針を掲げている。「グリーンレジリエンス」は単なる防災機能だけではなく地方創生に一役買うものとして、今後とくに地方においてさらなる成長が期待されているのだ。
シンポジウムでは、石破茂地方創生担当大臣も登壇した。石破大臣は「日本は経済成長の過程で針葉樹をたくさん植えてきたが、大量の輸入材で国産木材の価格が暴落し林業が衰退。手入れしてない山も増えてきた。たとえば高知県では雨も降っていないのに大きな土砂崩れが起こった。木が密集して日が当たらず、下草が生えず水が溜まったからだという。砂防ダムなどの数は数百単位で増えているが、つくってもすぐに土砂で埋まってしまう。これは対症療法にすぎず、一定の効果はあるが山は蘇らない」と、これまで人間の手によって失われた自然資源の重要性を訴えた。
(つづく)
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