収まらない余震。国からの支援を求めていく~熊本県(3)
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梅雨に入り懸念される土砂災害の拡大
阿蘇地区では土砂災害が再発する危険性が高いため、復旧工事の進行が妨げられている。2012年7月の九州北部豪雨災害でも阿蘇地域や菊池地域で土砂災害が発生しており、ようやく砂防ダムなどの整備が完了したところだった。ところが熊本地震によって地盤が大きく揺すられてしまったため、現時点では災害箇所を予測することが不可能な事態になってしまっている。国土交通省の調査によると、地震発生から6月7日午前11時までに確認されている熊本県内の土砂災害は土石流など54件、地滑り10件、がけ崩れ94件。とくに南阿蘇村の被害が著しい。熊本地震では多様な土砂移動現象が発生したことが特徴であり、大規模な斜面崩壊、勾配の緩い斜面での斜面崩壊や地滑り、崩壊した土砂が土石流化して下流まで流出するなどの状況が起こっている。
九州では6月4日に梅雨入りが発表された。地震で地盤が揺すられたことにより土砂災害が発生しやすい状態になっているところに雨が降れば、さらに被害が拡大する恐れがある。とくに近年は7月に入ってから大雨が降る傾向が強い。九州北部豪雨災害も7月であり、1990年7月にも大雨による水害が発生している。ハード面の緊急対策を進めながら、一方では人命にかかわる被害も防がなければならない。すでに4月15日から土砂災害警戒情報を通常の基準よりも少ない雨量で発表する暫定的な運用が始められている。土砂災害警戒情報は市町村長や住民が避難の判断基準とするものであるため、発表のタイミングが難しい。それに情報が発表されたところで、必ずしも土砂災害が発生するわけでもない。しかし、熊本県では蒲田知事が「空振りを恐れない」と積極的な姿勢を示しており、7月に予想される大雨に向けたソフト面の対策も進めている。
耐震性能向上より長寿命化計画を優先
11年の東日本大震災発生を受け、全国で地震対策が進められた。それは熊本県も例外ではない。地震発生時には災害対策の拠点施設となる県庁舎も耐震改修されていた。熊本地震の本震では震度6の揺れにより棚が倒れたり、壁の一部が崩れるなどの被害はあったものの、建物の使用はとくに問題なかったという。
全国各地のインフラ施設は財政的に余裕があった高度経済成長期に整備されている。それから30~40年が過ぎた時期から老朽化が指摘されるようになり、12年に起きた笹子トンネル天井板崩落事故を受けて流れは加速。13年には道路法が改正され、トンネルの定期点検に5年に1度の近接目視が義務付けられた。これは非常に時間と手間のかかる方法であり、コストも跳ね上がる。県では16年度から交付金事業として3年計画で実施する予定を立てていた。ところが熊本地震が発生。スケジュールに変更はないものの、対象とするトンネルは阿蘇、上益城、菊池、八代、宇城など揺れによる被害が大きかった地域を優先することになった。(つづく)
【平古場 豪】※写真は熊本県提供
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