2024年12月24日( 火 )

耐力偽装を告発した「元・一級建築士からの警告」(全文)(4)

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 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物の構造設計で必要な部材や鉄筋量を減らす耐力偽装が行われていたと告発した元・一級建築士の仲盛昭二氏の警告書の全文を紹介する。


 今回の告発を決断した背景には、下記のマンションの事件が出発点になっています。

久留米市の欠陥マンション(新生マンション花畑西)の耐震強度不足問題

 現在、福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」における、設計の偽装、施工の不具合に起因する耐震強度不足を巡って、裁判が進められています。
 問題の建物は、上記の提言に含まれる構造計算書の偽装以外にも、基本的な構造設計で単純なミスを重ね、多重の偽装が行われています。しかし、建築確認審査を担当した特定行政庁である久留米市は、それら単純な偽装を全て見逃し、言わばフリーパスのような状態で、確認済証を交付したのです。
 このマンションは、地盤調査が行われないまま建築確認審査が行われ、地盤調査結果が存在しないにもかかわらず、構造計算は、「第1種地盤」(非常に堅固な地盤)として計算されています。さらに、構造計算書に必ずあるべき「入力データリスト」が外されており、意図的に偽装をしている事が、経験の浅い審査担当者であっても一目瞭然でした。本書で警告した「接合部の検討」も偽装されています。その他にも保有水平耐力計算における偽装など数多くの偽装がありますが、前述の単純な偽装さえ見抜けない久留米市は、審査能力を欠いていたと思わざるを得ません。そして、20年経過した現在でさえ、審査能力が向上したとは考えられないので、これまで久留米市が建築確認済証を交付した全ての物件について、構造計算上の様々な偽装や問題(本書で警告している接合部の問題などを含めて)が潜んでおり、安全を確認できない建物が数多く存在している可能性は高いと考えられます。久留米市民にとって、大きな不安となっているので、緊急調査をすべきであると思います。
 このマンションの裁判において、久留米市は、自らの責任を回避するためか、「建築確認通知書の図面や構造計算書が本物かどうか判らない」と、根拠も無く主張しています。久留米市が発行した建築確認済証及び添付の設計図書を、「偽物」と主張するのであれば、それ相応の根拠が必要なはずですが、何ら根拠は示されていません。久留米市は、責任逃れの為の苦しい言い訳に終始しています。
 設計者である木村建築研究所(福岡市南区、代表者・管理建築士:木村忠徳)は、設計図書に記名押印し、建築主と施工業者の契約書に実印を押していながら、「設計をしていない」、「勝手に名前を使われた」、「印鑑は社員が勝手に持ち出した」などと、久留米市同様、責任逃れに終始しています。設計で偽装をしていながら、その事を追及されると、子供の言い訳以下の開き直りの態度を示した、木村建築研究所の代理人弁護士に対して、裁判長は、「そんな言い訳は通用しない」と一喝されていました。

 施工を請負った鹿島建設は、同規模の建物を施工する現場の技術レベルを備えていれば、図面を見ただけで容易に判別できる設計上の問題箇所を悉く(ことごとく)見逃した上、更に、図面に明記された重要な梁を、30箇所も手抜きをし、意図的に施工していません。この施工上の不正について、行政である久留米市は、ゼネコンを擁護する姿勢・発言に終始しています。設けられなかった梁は、建物本体と外部避難階段を繋ぎ固定する重要な梁である為、現状のままであれば、大地震が発生した際に、避難階段が被害を受けて使用できなくなる、最悪の事態も想定されます。
 建築確認行為は、申請者より料金を徴収して行われる、極めて責任重大な業務です。同マンションの区分所有者たちは、行政庁の建築確認審査能力を信じ、また、国内のゼネコンのトップクラスに位置する鹿島建設ブランドも、信頼していました。しかし、これらの信用・信頼が、同マンションでは、全て裏切られました。上記提言で表した、構造設計者たちの偽装行為と、更に加算された、これらの意図的な偽装行為は、その本質において、何ら変わるものではなく、建物の構造耐力を著しく毀損する許されない行為です。このような具体的事例に直接関わり、その実態に触れたことも、今回、私が、緊急提言を行った理由の一つです。
 いつ発生するか分からない巨大地震に対して、危険な状態に置かれている建物を、一刻も早く補強し、安全性を確保する事は言うまでもなく、建築業界が国民からの信頼を取り戻す事を願っています。

(つづく)

▼関連リンク
・耐力偽装、建築界に蔓延か?部材や鉄筋量を減らす操作~元・一級建築士からの警告
・部材や鉄筋量を減らす耐力偽装、警告の元・一級建築士に聞く(前)

 
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