2024年12月24日( 火 )

耐力偽装を告発した「元・一級建築士からの警告」(全文)(5)

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 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物の構造設計で必要な部材や鉄筋量を減らす耐力偽装が行われていたと告発した元・一級建築士の仲盛昭二氏の警告書の全文を紹介する。

 鹿島建設は、梁の未施工以外の瑕疵の一部である、鉄筋の被り厚さ不足(被り厚さゼロの箇所も多数あり=コンクリート剥落も発生)、コンクリートの中性化の異常な速度での進行(最大64mm=鉄筋の被り厚さをはるかに超える)、コンクリート躯体内部への木片などの異物混入などを、自らの調査で把握していながら、マンションの区分所有者に隠蔽しつつ、自らは、下請業者に損害賠償を求め、提訴していました。
 裁判に至り、鹿島建設は、「図面通り施工しただけ」と開き直りとも言える態度を取り続けています。マンションの手抜き工事及び危険性を自らの調査で把握していながら、区分所有者にはそれを隠蔽し、下請業者からは裁判で賠償金を取り上げようとする企業体質には大いに疑問を感じます。鹿島建設は、我が国を代表する建設業界のリーダーとして範を示すべく、今一度、襟を正すべきではないかと思います。
 このマンション訴訟において発覚した、鹿島建設・木村建築研究所・久留米市が行った不正な行為や、本書の前半で述べた構造設計の偽装が、全国に存在している実態に対し、実例として、敢えて、このマンションの問題を取り上げた次第です。

 下記の写真は、「異物(木片)混入」の写真です。これは、台湾の地震で大問題となった「一斗缶の混入」と同様の悪質な手抜き工事です。

コンクリート内部の木片混入<

コンクリート内部の木片混入

コンクリート内部に混入した木片(拡大写真)<

コンクリート内部に混入した木片(拡大写真)

 下記の写真は、久留米の新生マンション花畑西で、鹿島建設の施工不良の一つで、鉄筋の被り厚さが確保されていなかった事が原因で鉄筋が爆裂しコンクリートが落下した箇所の写真です。落下した際に、住民に被害がなかった事が不幸中の幸いでした。

平成18年12月25日、鹿島建設及び新生マンション花畑西管理組合の定例会議議事録より<

平成18年12月25日、鹿島建設及び新生マンション花畑西管理組合の定例会議議事録より

 この欠陥マンションを巡る裁判では、建築確認担当行政庁である久留米市は、設計の偽装を見抜けなかった、自らの審査能力の欠如が露呈する事を回避する為に、「建築確認通知書に添付されている図面や構造計算書が本物かどうか分からない」という、荒唐無稽な言い訳を繰り返しています。久留米市が、建築確認審査に必要な能力を有していない事は、過去・現在を通じて同じ状況なので、今日までに久留米市が確認済証を交付してきた建築物において、同様の見落としや審査ミスが隠れている可能性は非常に高く、緊急に実態調査を行い、対策を講じなければ、今後とも長期に亘り、久留米市民の生命を危険に晒すことになりかねません。
 施工を請負った鹿島建設は、下請の工事業者に対して、手抜き工事の損害賠償請求訴訟を起こしていながら、いざ、鹿島建設自身が区分所有者から訴えられると、「図面通りに施工したので安全性に問題はない」と、平然と開き直っているのが実態です。
 ちなみに、鹿島建設は、図面に明記されていた、建物本体と外部避難階段を接続する重要な梁を、手抜きにより、30箇所も施工していません。これだけ、悪質な手抜き工事を意図的に行っていながら、「図面通りに施工した。安全性に問題ない」と開き直る体質は、久留米市の無責任な態度、構造設計における偽装と同じ根を持っていると言わざるを得ません。
 鹿島建設が下請けの栗木工務店に損害賠償をもとめた訴訟{福岡地方裁判所久留米支部 平成19年(ワ)第665号 損害賠償請求事件(原告:鹿島建設、被告:栗木工務店)。以下「鹿島栗木訴訟」}において、鹿島建設自らが、工事のずさんさを指摘しています。
 鹿島建設は、鹿島栗木訴訟において、「(鉄筋の)かぶり厚の著しい不足(建築基準法施行令79条の著しい違反)・・・請負業者として当然に要求される注意を払えば容易に防げたはずの瑕疵であり、これが被告の重過失に基づくことは明らかである」(鹿島栗木訴訟 鹿島建設 第4準備書面2頁)と主張している。これは、そのまま、栗木工務店の元請けである鹿島建設自らに対して、その責任と瑕疵があることを認め、述べていることに他ならないのである。1 鹿島栗木訴訟、鹿島建設第9準備書面3頁では、鹿島建設建築工事部統括部長であった木村洋介氏の平成18年1月26日の発言として、「写真を見てもわかるように非常に品質が悪く、設計図どおりの工事が行われていないと記述している。2 鹿島栗木訴訟における鹿島建設の主張の通りであるので、本件マンションにおける、鉄筋のかぶり厚不足は「著しい」ものであり、「請負業者として当然に要求される注意を払えば容易に防げたはずの瑕疵」であり、「重過失」であり、「非常に品質が悪く、設計図どおりの工事が行われていない」と、鹿島建設自らが断定している事である。一方、本件において、鹿島建設は、「図面通りに施工しているので、設計だけの問題」という主旨の主張を繰り返している。
 「図面どおりの工事が行われていない」という鹿島建設の統括部長の発言が、鹿島栗木裁判における鹿島建設の準備書面に記載され、実際に、建築基準法施行令79条に基づき図面に明記された鉄筋のかぶり厚さ通りに施工されていないにもかかわらず、本件裁判における「図面通りに施工した」という鹿島建設の主張は、両裁判における主張の矛盾であり、自身が不利となる事実に対しては、それを覆い隠し責任を回避しようとする不誠実極まりないものであり、その姿勢については「二枚舌」とのそしりを免れないものである。
 また、建物本体と外部避難階段を繋ぐ重要な梁が30本も施工されていないという事実も、「図面通りに施工した」という被告鹿島建設の主張と相反するものである。

 平成19年の「鹿島栗木訴訟」において、鹿島建設自らが、下記の表現で、コンクリート内部への不純物混入を認めている。

「コンクリート中にゴミが混入しており」
「品質管理がずさんである」
「極めて ずさんな施工管理をしている」

 鹿島建設は施工の当事者でありながら、この様な事を平然と記載している。本件訴訟において鹿島建設は、「図面通りに施工したのであり、構造上の問題は設計だけ」と主張していたが、9年前に、「施工に問題があり、極めてずさん」である事を認めていたのである。
 コンクリートの内部への不純物の混入は、台湾のマンション倒壊の事例でも大問題になり、衝撃的な映像を見た本件マンションの原告住民たちからは、恐怖を訴える声が数多く挙がっている。コンクリート断面は図面通りの寸法で施工されてこそ性能を発揮できるのである。特に、圧縮力を受ける部分に不純物が混入していた場合、コンクリートの圧縮強度が大幅に損なわれるため、建物にとって、致命的な欠陥となってしまうのである。
 一斗缶であれ木片であれ、コンクリートとの圧縮強度の差は、誰が考えても明らかである。調査で判明した箇所以外にも、木片などの不純物が混入されている可能性は否定できない。人間に例えれば、骨粗しょう症のような状態であると言える。被告鹿島建設は、この致命的欠陥を知っていたが故に、「極めてずさん」と、断定しているのである。
 調査された箇所は、建物全体からすれば一部に過ぎないので、他にも不純物が混入されている可能性は非常に大きく、建物全体に危険個所が点在していると考える事が合理的であると思われる。

鉄筋の腐食が進行している写真(鹿島建設自らの調査)<

鉄筋の腐食が進行している写真(鹿島建設自らの調査)

(つづく)

▼関連リンク
・耐力偽装、建築界に蔓延か?部材や鉄筋量を減らす操作~元・一級建築士からの警告
・部材や鉄筋量を減らす耐力偽装、警告の元・一級建築士に聞く(前)

 
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