2024年11月22日( 金 )

(株)ペンシル新旧社長インタビュー~新体制で新たなステージへ(1)

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(株)ペンシル 取締役会長 覚田 義明 氏
代表取締役社長COO 倉橋 美佳 氏

 独自の研究で蓄積してきたノウハウを基にWebサイトを分析し、クライアントの売上や成約アップにつなげていく研究開発型Webコンサルティングを手がける(株)ペンシル。同社は6月1日付で、これまで代表取締役社長を務めてきた覚田義明氏が代表権のない取締役会長になり、後任にはこれまで取締役COOを務めてきた倉橋美佳氏が就任するという新たな体制へと移った。今回の体制変更の経緯や同社の今後の動きなどについて、新旧社長のお2人に話を聞いた。

(聞き手:弊社リサーチ事業部副部長・鹿島 譲二)

決してぶれないクライアント第一主義

 ――倉橋新社長のご就任おめでとうございます。まず、今回のタイミングで倉橋社長に社長を任せられた経緯や決断の背景を、覚田会長にお聞きしたいと思います。

 覚田会長(以下、覚田) 倉橋が(株)ペンシルに入社したのは、今から14年前になりますかね。彼女は九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)の出身でして、アーティスティックな部分とロジカルな部分との両方を兼ね備えており、入社当初から光っていたというか、尖がっていた才能を持っていたように思います。その後も、倉橋自身がいろいろな社内改革に取り組んでくれたり、企画部をつくって新しいことにチャレンジしようとしたりと、ずっとペンシルのなかで尖がった働きをしてくれていました。なので私としては、結構早い段階から「倉橋を次の社長にしよう」と思っていて、「社長になってくれ」とずっと口説いていましたね。
 代表権についてですが、やはりペンシルは、どうしても私の色が強いんですね。なので悩んだのですが、代表権を移したほうが「本当に継がせた」ということが伝わるんじゃないかということで、代表権を移しました。

 ――倉橋社長は、ペンシルに入社されたときは、どのような会社だと感じられましたか。

(株)ペンシル 覚田 義明 取締役会長<

(株)ペンシル 覚田 義明 取締役会長

 倉橋社長(以下、倉橋) 私が入った当時は、社員数はまだ20名くらいでした。ちょうど会社が成長して仕事が増えていっている時期だったのですが、会社がやりたいこととできることのギャップがすごくあると感じていましたし、前向きなところとそうじゃないところなども結構あるように思っていましたね。また、当時は経営者である覚田の色がとても強い会社でしたので、社員それぞれが意志を持ってやるというよりは、全部おうかがいを立ててからやるというような雰囲気がありました。私はそういったところにはすごく反発をしていて、ちゃんと社員が自分たちで動くような組織にしたいというのは、当時から言っていました。

 覚田 やはり当時は、当然ながら私が一番ノウハウを持っていましたし、成功事例も多くつくっていました。そのため、自分が言う通りにすれば成功すると思っていましたし、その成功ノウハウこそがクライアントへの一番のサービスだと思っていたわけです。逆に、私がスタッフに任せて失敗してクライアントに迷惑をかける、それが一番ダメなことだと思っていました。いかにしてクライアントへのサービスのクオリティを保つかに注力していましたし、その結果として社長の私におうかがいを立てて仕事を進めるような組織だったのかもしれません。
 今は、「覚田さん変わったね」とよく言われるのですが、それは私が変わったわけではありません。やはり今はスタッフがすごく優秀になって、自分の意見をちゃんと持ったうえで、私の言う「クライアントを絶対に成功させる」という目標を理解したうえで目指してくれるようになったからです。そういう彼らの責任のある言葉ならば、と私が聞けるようになっただけです。先ほどのお話にありましたように、倉橋が入ってきた当時のスタッフは、それがまだまだでした。なので、倉橋はスタッフに対しても怒っていましたし、私に対しても怒っていました。ただ倉橋は、当時から私がやろうとしていたことを、一番に理解してくれていたと思います。そうして一緒になって、社内を良い方向に導いてくれました。

 ――倉橋社長は、当初は取締役や社長になるのには、あまり気が進まなかったそうですが。

 倉橋 クライアントのことはすごく好きで、クライアントのためになることはやりたかったのですが、その一方で、スタッフに時間を費やすのはあまり好きではありませんでした。クライアントのために時間を費やしたかったですし、そこに集中したいという思いが強かったのです。そうした思いもあって、取締役などの役職が付くと、なかなかそうもいかなくなるので、当初はあまり気乗りしませんでした。

 ――社内のマネジメントとかそういったものは、あまりお好きではなかったと。

 倉橋 そうですね。好きではないというか、自分の得意な分野ではないので、それであれば得意なところでやるほうがいいな、とは思っていました。
 ただ、最終的には、それがお客さんのためにもなるな、と考え方が変わっていきました。結局のところ、私1人でクライアントの全部が全部を見れるわけではありません。そのため、会社としての組織力だったり、そういったものを上げていくことが、ひいてはクライアントのためにもなるなと、そういったことを徐々に感じてくるようになりました。そうしたとき、組織でもっと良いサービスを提供するためには、もう少し自分ができる範囲を増やさなければならないのだろうと思い、取締役だったり、今回の社長だったりを引き受けてもいいというように、心境が変化していったように思います。

(株)ペンシル 倉橋 美佳 代表取締役社長COO<

(株)ペンシル 倉橋 美佳 代表取締役社長COO

 覚田 やはり我々は、「クライアント第一主義」ということは絶対に譲れません。“第一”どころか、“全部主義”と言ってもいいくらいです。クライアントが成功することこそが、我々の研究や実験、そしてノウハウが正しかったという証明になるわけですから。ただ、クライアントを大切にすることで、我々の会社の売上も上がり、そうすると社員の給与も上がっていきます。クライアントのことを一所懸命に考えていけば、結果的にそうなっていくのです。なので、「クライアント第一主義」です。その部分は倉橋は一番に理解してくれていますし、絶対にぶれません。

 この業界は、人がすごく若いんですね。どこの会社に行っても、みんな若い。うちのクライアントにしても、みんな若くなっていっています。スピードがいりますから。そうすると、やはり若い人にさせるのが一番です。そうでないと、これから勝てません。また、昔はクライアントもWebのことをあまり知らなかったのですが、今はすごく知っています。なので、それを上回るサービスをしなければならないわけです。それにはもう、私にいちいちおうかがいを立てるような経営の方法ではなく、倉橋を中心として、いろいろな事業部が自発的にどんどんとやっていくような経営にしなければダメです。倉橋はどんどんとやらせるタイプですから、倉橋に任せたほうが全体的なスピードはすごく上がります。それが彼女に社長を任せた理由の大きな1つですね。
 あとはクリーンな感じですね。これまでのペンシルは、やはり私が「ガンガン行くぞー」と引っ張ってきて、「覚田義明商店」のようなカラーでやってきましたから、私の個人会社というようなイメージが強かったと思うんですよね。それをもっと、上場はしませんし目指していませんが、上場企業のような、福岡を代表する会社にしていきたいという思いもあります。そうした場合、同族ではなく、14年間叩き上げで来た、若い力を持った倉橋が社長になるのが、適任だと考えました。

(つづく)
【文・構成:坂田 憲治】

 

<COMPANY INFORMATION>
代 表:倉橋 美佳
所在地:福岡市中央区天神1-3-38
    天神121ビル5F
設 立:1995年2月
資本金:5,200万円
売上高:(16/2)21億5,462万円
URL:http://www.pencil.co.jp/

<プロフィール>
kakuda_pr覚田 義明(かくだ・よしあき)
1995年に研究開発型Webコンサルティング会社の(株)ペンシルを設立。分析を強みとし、ライオン、カゴメ、江崎グリコ、リンナイ、全日本空輸、日本ベリサインなど多くの企業のWeb戦略を成功に導く。今年6月から取締役会長に就任。また、一般社団法人ペンシルアカデミーを立ち上げ、代表理事に就任した。

<プロフィール>
kurahasi_prf倉橋 美佳(くらはし・みか)
1978年生まれ、福岡市出身。九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)卒業後、2003年に(株)ペンシルに入社。R&D事業部マネージャー、取締役を経て、14年に取締役COOに就任。そして今年6月に、代表取締役社長COOに就任した。なお、5月20日に営業を開始した台湾現地法人の台灣朋守有限公司の董事長も務めている。

 
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