2024年11月27日( 水 )

【熊本地震】M7.3強襲!!記者が体験した被災地の真実(2)

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車中泊の死の恐怖

 1度目は無事だったが、本震で倒壊した建物、自宅で就寝し犠牲になった人もいた。翌日、メディアはさらに拡大した被害の状況を伝えていた。不意打ちのように襲ってきた「本震」。たとえ、家が倒壊せず、無事であったとしても、その後も頻発する震度3~5の揺れのなか、家で眠ろうという気にはなれなかった。多くの人が車中泊を選択した。車の中にいれば、崩れてくる建物の下敷きになることはない。

車中泊の状況<

車中泊の状況

 しかし、車中泊には別のリスクがあった。「エコノミークラス症候群」(深部静脈血栓症または肺塞栓症)である。長時間同じ姿勢でいると、脚の静脈の血行が悪くなり、脚に血栓(血の塊)ができる。この血栓が、動き始めることで静脈に流れ、全身の血液循環に支障をきたし、最悪の場合、死に至ることもある。私は、車の運転席に布団を敷いて寝たが、朝起きると全身の疲労が抜け切っておらず、むしろ一段と疲れたような感じがした。病名は飛行機の座席に由来するが、長時間同じ姿勢をとり続けていれば発症するとされている。

 4月18日、車中泊をしていた51歳の女性がエコノミークラス症候群で死亡するというニュースが被災地に大きな衝撃を与えた。症状は個人差(体質的に血栓ができやすいなど)があるというが、車中泊をした人間なら誰もがその女性の死を身近に感じたはずだ。避難者の多くが『死』と隣り合わせにいる。しかし、それでも建物の中で眠ろうという気にはなれなかった。一向に止む気配のない地震のなか、病気のリスクよりも屋内にいるリスクのほうが高いと誰もが思っていた。そうした心情を汲み取ってか、メディアも車中泊は致し方なしとして注意喚起と予防策が報じられるようになった。

 エコノミークラス症候群でなくなった女性は、実家の近所にある公園に避難し、車中泊生活を送っていたという。私が受けた衝撃は大きかった。もともと心臓の弱い私の母を心配し、すぐに家の外に逃げ出せる外側の部屋で寝るよう勧めたが、「車の中はきついけど、家の中にいる時に余震が起きると怖くて胸が苦しくなる」と話す。震度3~4の揺れが、最初に味わった震度7の恐怖を呼び起こす。とくに家の中は、揺れとともに家屋が軋む音が恐怖を一層駆り立てる。母だけでなく私もまた、精神的に家の中では眠れないという状態に陥っていた。

(つづく)
【山下 康太】

 
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