韓国経済ウォッチ~THADD配備決定がもたらす変化は?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国国防省は7月8日、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THADD)(サード)」を、在韓米軍に配備することで最終決定したと発表した。韓国の国防省で行われた共同記者会見で、柳済昇(リュ・ジェスン)国防省政策室長とトーマス・ベンダル米第8軍司令官兼在韓米軍司令部参謀長(中将)が、このように公式発表した。今回のTHADD配備の決定は、北朝鮮の核兵器および弾道ミサイルの脅威から韓国国民の安全を確保するとともに、米韓両国の軍事力を保護するための防衛的な措置であると柳室長は説明した。米韓両国がTHADD配備の協議を開始したのは、今年の2月7日なので、協議開始から最終決定まで5カ月がかかったことになる。THADDの実際配備は、2017年末頃になるようだ。
これまで韓国ではTHADD配備をめぐって賛否両論の激しい議論があったが、配備はすでに決定されてしまった。そのため、今後の運用と、THADD配備がもたらす周辺国への変化などを予測し、備えていくことが大事であろう。それでは、THADDとは、どのようなミサイルで、どのような配備効果があるのか――。
韓国の現在のミサイル防御の主軸は、パトリオットである。これはアメリカのレイセオン社が陸軍向けに開発した、広域防空用の地対空ミサイルシステムである。ミサイル防衛では終末航程に対応し、20km~35kmを防御する。
パトリオットで韓国全体をカバーしようとすると、砲台は数百台が必要になる。もしパトリオットで迎撃に失敗したとしても、もう1回上空で迎撃できれば、迎撃の確率は上がるし、迎撃の密度も上がる。ところが、北朝鮮の核ミサイルの脅威は、ますます現実味を帯びていて、韓国としても早急に防御システムを強化する必要が出てきた。現在、北朝鮮は、韓国向けに短距離スカッドを約800発、それに日本向けの中距離ノドンを約200発など、さまざまな弾道ミサイルを保有している。
最近、北朝鮮は潜水艦で弾道ミサイルを発射する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験までするようになって、ミサイルの脅威は国の存続を脅かす危険領域に達しつつある。北朝鮮のこのような動きに対して、米国、日本、韓国は緊密に連携を取ろうとしている。
それで、米国では韓国にTHADDを配備することによって、防御能力をより高めるとともに、中国の台頭にも牽制しようとしている。
(つづく)
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