2024年11月05日( 火 )

ブローカー末広産業が選ばれるワケ~福岡市発注工事

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杭打業者税金ピンハネの実態(3)

 福岡市発注の公共工事において、納税者をあざ笑うような杭工事業者の受注実態が発覚した。問題の工事業者は福岡市西区に本社を置く末広産業(株)(佐藤九一郎代表)。従業員わずか5~6名、工事用の機械も持たない同社が一次下請に入り、工事代金の一部を事実上ピンハネしている状況だ。データ・マックスは、同社が施工に関与した公共工事の関連文書を福岡市に情報公開請求。入手した資料から、過去3年間の市発注工事において、同社が施工に関わった26件すべてが一次下請であったことが判明した。施工体系図や下見積書からそのありえない実態を報告する。

商社の存在が常態化

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 杭打ち工事で、一次下請に商社が入る。商社と言えば聞こえはいいが、事実上のブローカー仕事だ。このような下請構造はあり得るのか。業界関係者に話を聞いた。あるゼネコンは言う。「杭打ち業界はやや特殊かもしれないが、一次下請にブローカーが入り、二次、三次に大手が入るのは珍しいことではない」。また、同業の杭打ち業者は次のように語る。「商社と言われる杭打ち業者で、機械まで持っている業者はほとんどない。重機とオペレーター含め作業員4、5名一組で作業を行うが、現場作業は末端の個人経営の業者が行うことも多い。商社と呼ばれる業者は、監理もしない。受注して、そのまま10~20%抜いて、下請に流すだけ。現場には最初の挨拶には行くが、現場監理の名のもとには来ない。受注者は下請けであっても、現場にいないといけないはずだが・・・」。業界では、それほど特別な話ではないらしいが、市民目線に立てば、税金の無駄が浮き彫りになる。そもそもブローカーを入れるメリットは何か。

商社を入れるメリット

 「大手(杭打ち業者)にとって、ブローカー商社は外せない存在。それはお金の問題。大手杭打ち業者が直接ゼネコンと契約するといろんな要求を受けるうえに、ゼネコンは支払いのサイトが長いところが多い。商社は杭打ち工事が終われば、お金を払ってくれる。長い支払いサイトに苦しむよりも、商社に潜り込んでいたほうが資金回転しやすい」と業界関係者は語る。

 民間工事なら、発注者の意向に沿えば、何も文句は言わない。しかし、上述のような公共工事ではそうはいかない。重ねて言うが、市民目線に立ったとき、税金の無駄は明白だ。さらに工事の丸投げ禁止は常識。商社を外し、一次下請に、大手杭打ち業者が入れば問題はないはずである。

施工体系図より0715_sekouzu_s

不満続出、ゼネコンの声

 福岡市発注工事で受注を繰り返す末広産業が選ばれる理由は何なのか。市発注工事で末広産業に下請発注したことのある地場ゼネコンに取材を試みた。以下が、ゼネコンの声だ。


 ゼネコンA社
「杭工事の値段が下がらないので、各ゼネコンは困っている。たいてい杭打ち大手に見積もりをお願いするが、このときは明確な理由を述べず、大手からいずれも『見積もりできない』と言われた。業者が少ないこともあるが、見積もりできるのは末広産業しかなかった。工期が迫っているから、待てずに末広産業に発注したが、二次下請にその大手が入っており、おかしいと思った」

 ゼネコンB社
「工事の仕様書には杭の種類、工法の指定がある。その特許を持つのは大手。設計段階でどの杭を使うか決まっている。どこからともなく末広さんが『今回はうちで』と営業に来る。情報の連携がなくては、この動きはできないはず」

 ゼネコンC社
「『代理店を通して欲しい』とジャパンパイルや大洋基礎が末広産業を挟んでくる。そうなると、競争相手がいないので、値交渉にも応じてくれない。」


 業界関係者はすでにこの状況を疑問視していたが、個別案件として、それほど気に留めなかったようだ。改めてデータ・マックスが収集したデータを見て、驚き隠せない様子だった。

隠れた談合行為か?

 ジャパンパイルや大洋基礎など、大手杭打ち業者の「一次・末広」への誘導ともとれる動きがあるのは事実。これが同社に受注が集中する仕組みなのか。

 添付表の下見積参加業者に目を向けてみる。大型施設が多いことから、施工できる業者も限られる。ある程度参加業者が絞られるのは仕方ない。全国大手杭メーカーを中心に、地場基礎工事業者が名を連ねている。なかでも、地場に限って言えば同社の参加率は圧倒的に高い。杭工事の23件のうち、同社が下見積もりに参加したのは、9件。そもそも、実際の施工部隊を持たない同社に、これほどまで見積もりさせる福岡市の姿勢にも疑問を持つ。

 福岡市財政局技術監理課は取材に対し、「下見積もり参加業者は原則として、登録業者名簿から選ぶ。特殊な技術・工法が必要な場合は例外もある」と答えている。しかし、最新の登録業者名簿に末広産業の名前はない。

 直近の取材メモを振り返り、杭打ち大手と末広産業をメンバーとする、ある勉強会の存在を思い出した。

(つづく)
【東城 洋平】

下見積書よりmitumori_s

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