2024年12月23日( 月 )

TPP協定批准で日本は米国の植民地になる!(後)

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元農林水産大臣・弁護士 山田 正彦 氏

日本語の正文がなく奇妙

 ――とても怖い話ですね。ところで、TPP協定を日本政府はあたかも「農業」だけの問題のような説明をしていますが、実体は大きく違いますね。

 山田 おっしゃる通りです。どちらかと言うと、新聞・TVもそのような報道が多いので、
国民の皆さんは誤解されています。参議院選挙の応援・遊説で日本全国を回った際も、TPPを農業だけの問題として考えている人が余りにも多く驚きました。

 しかし、それも仕方がないのかもしれません。TPP文書は6,300頁ありますが、日本政府は1,800頁しか翻訳していません。もともと、加盟国中GDP第2位の日本語の正文(正文は英語、フランス語、スペイン語)がないのがとても奇妙なのです。日本政府は、日本語での正文を求めなかったことを明らかにしております。

ロビイストの作成文書だ

元農林水産大臣・弁護士 山田 正彦 氏 <

元農林水産大臣・弁護士 山田 正彦 氏

 TPP協定は、農業だけの問題ではもちろんありません。農業、医薬品・医療機器、インフラ輸出(政府による物品購入、公共投資などの政府調達について、中央だけでなく、地方自治体の公共投資の入札に外資系企業も参画など)、金融保険など、すべての産業分野にわたっています。
 私たちは、この文書はアメリカ政府ではなく、「米国の約600社(事実上米国の政治・経済を動かしている)の多国籍企業のロビイストである弁護士たちが作成した文書である」と考えています。農業だけであるはずがなく、この約600社の産業分野のすべてが対象になっているということです。

 今回、もし日本でTPP協定が批准されてしまえば、日本の国会、法律よりも、米国の約600社の多国籍企業の意思が優先されることになります。このことは「TPPでは米韓FTA以上のものを要求する」(USTR(米国通商代表部)ウェンディ・カトラー女史)の米韓FTAから、容易に想像できます。

すべては根拠のない作文だ

 ――安倍政権は、昨年末にTPP発効によって「国内総生産(GDP)は実質的に約14兆円(2.6%)押し上げられ、80万人の新規雇用を生む」という説明をしました。しかし、今多くの識者がその根拠に疑問を持っています。先生はこの点については、どうお考えですか。

 山田 面白い話があります。米国のマサチューセッツ州にある名門タフツ大学の研究室では、TPPが締結された場合の2015年から25年の10年間で、各国のGDPがどのように変化し、雇用がどのようになっていくかを試算、今年1月に発表しました。日本の場合は、GDPが0.12%(約56億4,000万円)減少し、7万4,000人の失業者が生まれることになっています。米国の場合はもっとひどくて、GDPは0.54%減少し、44万8,000人が失業することになっています。この発表では、TPPによって経済成長を遂げる加盟国はゼロで、逆に失業者が急増することになっているのです。

 先日、このタフツ大学研究の共同執筆者である米国の著名な経済学者ジョモ・K・スンダラム氏が来日し、国会議員との意見交換会を行いました。その席で、ジョモ氏は、政府の試算について、内閣府の吉田竹志企画官に「日本は何を根拠にGDP14兆円を試算したのか」を問い、「完全雇用をもとに静的モデルの最高と最低の数値をもとに計算した」という答えを聞いて呆れていました。また「日本の産業のどの分野で80万人の雇用が増えるのか」聞かれた際も、吉田内閣府企画官は最後まで「産業別の試算はしていない」としか答えられなかったのです。
 つまり、「GDPを14兆円押し上げ、80万人の雇用を生み出す」という試算は、すべて根拠のない作文だったのです。安倍総理は、まるで息を吐くように嘘を言いますので、国民の皆さんは騙されないように注意する必要があります。

最悪の事態を避けるために

 私はこのタフツ大学の研究成果は、かなりしっかりしたものと考えています。それを裏づけるように、通商貿易に関して世界的権威のある米国の『US Inside Trade』でも、TPP協定で米国のGDPが増えるという米国政府の説明を批判しています。この点について、日本の経済誌はどこも論評をしておりません。

 TPP協定で、日本のGDPが増えるわけがありません。失業者が増し、それ以上に食の安全が脅かされ、電気、ガス、水道サービスなどの劣化が避けられなくなります。私たち「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」などTPP協定反対団体は何としてでも、本日お話しした最悪の事態を避けるために、引き続き活動を続けていきます。

(了)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
yamada_pr山田 正彦(やまだ・まさひこ)
1942年長崎県五島生まれ。元農林水産大臣・弁護士。「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」幹事長。早稲田大学卒業。司法試験合格後に弁護士事務所開業。一方で、五島で牧場を経営。4度目の挑戦で衆議院議員に当選。BSE(狂牛病)に関する法案作りに尽力。2010年6月、
農林水産大臣に就任。著書として『TPP秘密交渉の正体』(竹書房新書)、『「農政」大転換』(宝島社)など多数。

 
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