2024年12月24日( 火 )

韓国経済ウォッチ~韓国造船業の深刻な不況と構造調整(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 「構造調整」とは、もともと企業が時代の変化とともに、いらなくなった事業や非効率的になった事業を整理し、組織に変化を持たせることである。企業は生産性を最大化し、組織を最高の状態に保つために、いろいろな努力をするが、それが構造調整である。
 人間も運動によって、贅肉など不必要なものは落とし、体力を鍛えて、筋肉を強化するように、企業にも人間の運動のような構造調整が必要になる。企業は事業戦略、リソースの再配分などで構造調整を実施する場合もあるが、外部環境の変化に適応するのに構造調整を実施することも多い。
 企業の場合は、外部環境の変化にうまく対応できないと、大変なことになる。その良い事例としては、スマホの登場に対応できなかった携帯電話業界ナンバーワンだったノキアが挙げられる。コダックもカメラのデジタル化の波に乗り遅れ、市場から姿を消している。

zousen このように構造調整は、企業の内部および外部の変化に対応するための必須戦略とも言える。しかし、構造調整にはマイナス的な要因もあるので、慎重に計画し、実施されるべきである。

 このように企業には欠かせない構造調整であるが、構造調整と言えば“人材構造調整”である「リストラ」が構造調整の代名詞のようになってしまった。というのは、人的構造調整は手を付けやすく、費用削減の効果がすぐ現れるからだ。

 ところで、韓国の造船業は深刻な不況に直面し、大規模なリストラが予定されている。

 韓国の造船業は、2000年の初頭に“世界王者の座”を日本の造船業から奪い、韓国の発展を支えてきた産業の1つであった。韓国には“造船ビッグ3”があるが、その3社を中心として、造船受注の世界ランクの上位を韓国企業の数社が占めていた。

 ところが、それから数年も経たない2004年頃から、中国の造船業の追い上げが激しくなる。
 中国では、自国の貨物を他国の船に運ばせるのはもったいないとし、造船産業の育成に力を入れることになった。もちろん中国では、1990年代の後半から海運・造船を育成するために、政府が積極的に動いた。旺盛な需要と経済成長を背景に、中国は造船業への投資を増加。その結果、造船業において中国の過剰投資による価格競争が起こり、造船受注において韓国の造船業は少しずつ中国に追い越されていった。

 このように造船業界が供給過剰になりつつあるなかで、08年に世界金融危機が発生する。金融危機の発生は、交易量の大幅の減少をもたらし、それは造船業をも直撃。その不況が続いていれば、そのときに構造調整が実施されたと思うが、幸か不幸か、2010年頃から韓国造船業は業績を回復する。

 なお中国は、その時期から構造調整を実施し、2010年には約4,000社もあった造船会社が、13年には10分1の約400社にまで減少している。

(つづく)

 
(後)

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