東ヨーロッパには何があるのだろう(5)
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Laba diena Vytas(こんにちは!ヴィタス)
リトアニア人のヴィタスは、国境を越えてヨーロッパを旅するバスのドライバーだ。そんなヴィタスは、10歳を頭に息子2人と末っ子の娘を持つ、3児の父親である。
リトアニア人は大きい。男子の平均身長は世界7位の181cm余り。ヴィタスはその平均より、さらに数センチ高い。そんな彼は、地元ヴィリュニスのバスケットボールチームのエースだという。リトアニアと言えば、バスケット大国だ。過去のオリンピックで3個の銅メダルに加え、ヨーロッパ選手権でも複数回の優勝実績がある。
「エストニアとラトビアはどうなんだ?」と聞くと、両手を広げ、肩をすくめて鼻で笑った。「問題外だよ」――その優越意識は、半端ではない。
もっとも、リトアニアのバスケットの世界ランクは、アメリカ、スペイン、アルゼンチンに次ぐ4位である。35位のラトビア、84位のエストニアは、たしかに問題外。ちなみに、日本は48位。ヴィタスの鼻が高いはずだ。そのヴィタスは、英語とロシア語を話す。バルト三国では、ロシア語は重要だ。地理的に隣接しているというだけでなく、貿易や観光で深い関係がある。エストニアやラトビアほどロシア人居住者の数は多くないが、リトアニアにとってウクライナ問題やクリミア併合など、対ロ危機感は過去の問題ではない。
そんなロシアでは今、三国の独立の合法性が、司法によって審議され始めたとも聞く。違法判決が出れば、クリミア併合の二の舞いにもなりかねない。三国から見れば明らかな侵略でも、ロシアに言わせれば“解放”ということになる。大国の論理とはそんなものだ。「徴兵はあるのか」と聞くと、彼はスマートフォンを取り出し、動画を見せてくれた。そこにあったのは、リトアニア陸軍の戦闘訓練の映像だった。
「でも、リトアニアは弱いんだ」――スマホの電源を切って、苦笑いをしながらヴィタスは言った。
たしかに、リトアニア軍は最大の陸軍でもその兵力は7,500人。海、空軍を合わせても、その軍事力は高々知れている。
「だからNATOが重要だ。いざというときは彼らが守ってくれる」と、ヴィタスは真剣な顔で言う。国のリーダーと国民が、共通してNATO強化の重要さを訴える。NATOは彼らにとっても、対ロシアのベストな防波堤なのだ。現実的には、つい最近、NATOは三国とポーランドに4,000人程度の駐留軍派遣を決めている。
幸か不幸か、我が故国にはこんな深刻さと切迫感はない。しかし、取るに足りない理由で平和は崩壊することを忘れてはならない。戦乱の歴史を重ねたこの国の人間と話をすると、否が応でもそれを認識することになる。
(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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