天才投資家ジョージ・ソロスと冒険投資家ジム・ロジャーズの中国分析から何を学ぶか(4)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
一方、ソロスとともに「クォンタム・ファンド」を立ち上げ、10年間で4,000%を超える驚異的なリターンを実現したのが、ジム・ロジャーズである。ウォール街では伝説的な人物であり、37歳で現役引退した後、冒険家として活躍中だ。バイクによる初の6大陸世界横断、ベンツでの世界116カ国走破、いずれもギネスブックに認定されているほど。自らの経験を元に、各国の長期的な経済成長の流れを読み、投資に活かす手法を編み出し、「冒険投資家」の名をほしいままにしている。実に行動力あふれる、ヘッジファンドのヒーローと言えよう。
そんな先読みの天才投資家だが、こと日本や中国の未来については、ジョージ・ソロスと似た点もあれば、まったく異なる点もあり、実に興味深い限りである。小生の質問に対して、ロジャーズは次のように答えている。
「日本はまだ豊かです。しかし、将来は中国の時代になるでしょう。これは歴史のサイクルです。中国は長い歴史のなかで、世界に覇を唱えたときもあれば、植民地化されたときもあります。成功と失敗の両極端を歩んできた国です。19世紀後半から20世紀は、中国にとって悲惨な時代でした。今、その流れが大きく変わろうとしているのです。これから中国は豊かになるでしょう。間違いありません」。要は、かつてフランスの皇帝ナポレオンが「中国は眠れる巨人で、目覚めれば世界を震撼とさせる」と予言したように、1978年に鄧小平が蒔いた改革開放政策の種が、実を結ぶ時期が近づいているというわけだ。
とはいえ、中国のバブル崩壊を危惧する声には、根強いものがある。この点を尋ねると、ロジャーズの見方は明快だった。
曰く、「中国を覆う貧富の差や地域間の格差の拡大を懸念する声は、承知しています。ご指摘の点はたしかでしょう。しかし、そんなことは、どこの国でも起こり得ること。遅かれ早かれ、中国経済は調整局面に入るはず。しかし、それはさらなる飛躍への踏み台のようなもの。日本でも似たような経験を積み重ねてきたはず。混乱もあるでしょうが、アメリカだって過去200年の間に、15回を超える不況を経験しています。日本も同様でしょう。中国はハードランディングによって、かえって国際化がスムーズに進むと見ています」。シンガポールに居を構え、自分の娘には中国語しか話せない乳母を付け、身の回りの世話をさせたと誇らしげに語るロジャーズ。生まれながらに中国語を身に着けさせようとの親心であり、と同時に中国人が世界を左右する時代を想定し、娘の将来にとって有利な環境を整えようとする深慮遠望であろう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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