2024年12月23日( 月 )

ドナルド・トランプ候補の支持率はなぜ急降下したのか(6)

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副島国家戦略研究所・中田安彦

 最大の焦点はオハイオやノースカロライナ、そしてトランプの大邸宅があるフロリダ州だ。オハイオ州は予備選を戦ったケーシック知事のお膝元だが、カーン氏に対する発言の後、トランプの支持率が急降下しているという情報がある。また、フロリダでは近年ヒスパニック系の有権者が増えていることが見逃せない。彼らはもともとメキシコ不法移民の悪口を言って白人層の支持を獲得してきたトランプには縁のない有権者たちで、ここをヒラリーが狙ってくる。民主党副大統領候補のティム・ケーンは、カトリック教徒で若いころにホンジュラスで布教活動をした経験があり、スペイン語は堪能だ。ヒラリーがケーンを選んだのは激戦州のヴァージニア選出であることと、このスペイン語の実力にある。ケーンは演説会場でもトランプのモノマネをして笑いを取るなど深刻になりがちな選挙戦にユーモアを提供しており、人柄としても問題がない。オバマ大統領にとってのバイデン副大統領(ペンシルヴェニア州生まれ)のに相当する存在になるだろう。
 だから、重要なのはフロリダ、オハイオ、ペンシルヴェニアの各州の情勢をチェックすることだ。アメリカの政治情報サイトである「リアル・クリア・ポリティクス」や、選挙予測屋のネイト・シルバーのサイトでは世論調査を加味した最新の支持率動向に基づく予測が行われている。2016年8月4日現在では、世論調査のみを考慮した予測値では、73.2%対26.7%という形で圧倒的にヒラリーが優勢になっている。オッズの変動を見ると、民主党大会直後にトランプが急低下し、ヒラリーが急浮上しているのが分かる。

ネイト・シルバーの予測サイトの画面キャプチャ

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※クリックで拡大

 ネイト・シルバーのサイトが優れているのは、各州ごとの情勢調査も表示されることだ。激戦州をクリックすると数字が出てくる。英語がわからなくても簡単に操作できるのが良い。
 8月から9月下旬の間は大きなイベントがないので、各候補者は全米をバスで遊説して回ることになる。ここでも既に民主党をまとめた(サンダース支持者でトランプに流れるのは10%程度)ヒラリーが何かと有利だ。オバマ大統領夫妻やバイデン副大統領夫妻、ビル・クリントン、チェルシー・クリントン、加えてエリザベス・ウォレン上院議員、場合によってはサンダースまで応援演説のマイクを取るかもしれない。一方でトランプ陣営は弱体化している選対の立て直しが急務で、誰に応援演説をしてもらうのかの人選も並行して行わなければならない。共和党の党大会では予備選を争ったテッド・クルーズは登場したものの、トランプの支持表明を行わず、マルコ・ルビオはビデオ出演のみ、という状況で、頼みの綱は早くから支持を表明していた、ニュート・ギングリッチ元下院議長、クリス・クリスティ(ニュージャージー州知事)、ルディ・ジュリアーニ元NY市長あたりだろう。いよいよトランプに息切れの傾向が見え始めた。

(了)

<プロフィール>
nakata中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 
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