2024年12月23日( 月 )

世界を見据えた地元密着企業、善循環型の経営で躍進(前)

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霧島酒造(株)
代表取締役専務 江夏 拓三 氏

 霧島酒造(株)は、国民的ブランドとも言える芋焼酎「黒霧島」(黒キリ)を生み出した焼酎メーカー。黒キリは、焼酎ブームが終焉しても世間では変わることなく飲まれ続け、人々の心を掴んで離さない。宮崎県都城市で年商600億円を計上する同社は、「トロッと、キリッと」のキャッチコピーや、「白霧島」と横綱白鵬関のタイアップCMなど、ブランドイメージ定着に成功している。その立役者、代表取締役専務・江夏拓三氏に話を聞いた。

 ――御社が大事にされている価値観「善循環」についてお聞かせください。

 江夏 「善循環」とは私の造語ですが、霧島酒造では善循環型の企業経営をしています。経営資源を良い方向へ循環させ、無駄を出さないことです。会社を繁栄させるためには、利益が出たときに蓄えようとして肥満体質にしたり、役員が贅沢に使ったりするのではなく、社内と社外に分けて目的を持って活用すべきです。たとえば、能力を育てることに利益をつぎ込めば、後でそれが返ってきます。

 ――育成や投資に使うということですね。

霧島酒造(株) 江夏 拓三 代表取締役専務<

霧島酒造(株) 江夏 拓三 代表取締役専務

 江夏 社内的には、物心両面で社員の満足度を高める取り組みをしています。具体的には給与のアップや福利厚生の充実などですが、社員の意欲を出すために活用すると、彼らが生み出す商品やサービスの質が向上します。質の高いものを提供することで、市場ではお客さまが喜んで購入してくださる。社外へは、たとえばCMを使ってブランドを高めるなど付加価値を付けます。黒キリ(黒霧島)の定番酒以外に、年に2回しか市場に出回らない期間限定商品の赤キリ(赤霧島)を出す。お客さまは、限定品だという希少価値に魅かれます。赤キリの在庫が切れたとき、自然と黒キリに戻るという流れがつくられています。

 ――循環型と言えば、御社では焼酎粕などを資源としたバイオマス発電所を建設されました。

 江夏 日々、大量に出る焼酎粕の処理は、外部委託をすると膨大な費用がかかります。当社で使う電力は九州電力から購入していますが、自家発電した分はすべて九州電力へ売電します。売電で2億円強の収入があり、設備投資の回収も良好です。自己処理ができることで、知恵とお金と時間を有効活用でき、後顧の憂いなくビジネス展開ができるのです。

 ――多くの企業が地元から脱却し全国ブランドを確立していくなか、御社は地元に密着されていますね。

 江夏 地元がなければ根無し草です。根無し草の商品は世の中にたくさん現れます。地元でつくられた商品が売れるからといって都会に進出する。ふと気が付いたら地元がなくなっていた、という会社も多くあります。地元を大切にしている企業は繁栄しています。トヨタは名古屋を、コマツは石川を、ワコールは京都を大事にしています。島津製作所や京セラ、任天堂など京都に世界的なブランドが多いのは、京都の文化をこよなく愛しているオーナーがいるからです。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:江夏 順行ほか2名
所在地:宮崎県都城市下川東4-28-1
創 業:1916年5月
設 立:1949年4月
資本金:2,289万円

<プロフィール>
kr_pr江夏 拓三(えなつ・たくぞう)
早稲田大学商学部卒業後、1977年に霧島酒造(株)入社。87年に常務取締役、96年に専務取締役、2000年に代表取締役専務に就任し、現在に至る。その他、(有)霧島自然農園園長、都城青年会議所第24代理事長、日本青年会議所指導力開発委員長、ウェルライフ(株)取締役、(株)エナツ専務取締役、都城ケーブルテレビ(株)代表取締役と、多数の役職に就いている。

 
(後)

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