人口増が続く福岡市の今後の都市づくりの方向性とは(前)
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M&R地域マーケティング研究所 代表 吉田 潔 氏
(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏神戸市の人口を抜き政令市として5位の都市となるなど、全国的に人口が減少している自治体が多いなか、人口増の勢いが止まらない福岡市。福岡市は今後、人口減が進む日本のなかで、どういった独自の強みを打ち出し、どのような街づくりを進めていくべきか――。これまでさまざまな地域づくりに携わってこられたスペシャリストである、M&R地域マーケティング研究所・代表の吉田潔氏、(株)環境デザイン機構・代表取締役の佐藤俊郎氏のお2人に、対談をしていただいた。
吉田 今、福岡市が国家戦略特区で、創業支援とかやっていますが、創業特区という戦略は非常に良いと、私も思います。ですが、なかなか目に見えるかたちには、なりにくいんですね。たとえば、金融特区でもいいんですよ。アイランドシティのときに私もいろいろと仕事をして議論をしたのですが、市が先頭に立って、あそこ――九大・箱崎キャンパス跡地をとにかく「徹底的に金融街にする」という旗を掲げて活用すれば、その旗の下にやっぱりかたちになるのではないか、と思うんですよね。創業特区でも、アニメでもITでも、そういう会社が集積している姿。そういうものが箱崎で見られるようになるといいですね。
たとえば、百道地区ができた頃に、産業・組織心理学会という学会の大会で、全国の経営学関係の方々を集めて、ドームで初めて学会の懇親会をやりました。そのときに都市高速を通って会場に向かう際に、全国の先生たちが「これはもう未来都市ですね」と言ったんですね。百道地区にビルが林立している姿を見て。そういうことなんですよ。あれは新しく1つの街ができたということがよくわかりますよね。そういう可能性が、箱崎にはあると思います。佐藤 やはり、そういう目に見えるかたちの集積というのは、1つの街を特徴づけるものなんでしょうね。ですから、基本的には、福岡が「これから何で食っていく」ための集積か、ということですね。もともと言われていたのは、福岡には基幹産業がない。ただ、ないけれど人は集積する。人が集積するというのが何かというと、一言で言えば、教育とか、文化みたいなもの。まさにシンガポールのように、人が行ったり来たり、集まって何かやることによって、そこで価値が生まれる――みたいな。
吉田 福岡大学の阿部真也名誉教授という流通論の先生が、「消費流通都市福岡」と言っています。たしかにそうなんですよ。福岡市は、消費と流通だけでほとんど成り立っていますが、ただそれではやはり、産業の構造としてはバランスを欠いていますよね。私は北九州に行くことが多いのですが、やっぱり北九州は製造業の街で、今は活力がないとは言われているけれども、ものをつくるというところから来る『都市の足腰の強さ』みたいなものは感じるんですね。たとえば、今、安川電機とかTOTOという元気の良い企業があって、ロボットとか衛生陶器とかで海外にも出て行っていて、技術の基盤というのが非常にしっかりとしていると思うんですね。
(つづく)
<プロフィール>
吉田 潔
1946年生まれ。地域マーケティング研究所代表。和歌山大学観光学部特別研究員/西日本工業大学客員教授/福岡大学商学部非常勤講師。地域おこしのスペシャリストとして活動している。趣味は、オーケストラでのヴィオラ演奏のほか、フルート演奏、読書、園芸、猫など多彩。<プロフィール>
佐藤 俊郎
1953年生まれ。九州芸術工科大学(現・九州大学)、UCLA(カリフォルニア大学)修士課程を修了。アメリカで12年の建築・都市計画の実務を経て、92年に帰国。94年に(株)環境デザイン機構を設立し、現在に至る。法人名
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