DRAM不況と業界再編(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、なぜこのような現象が起きているのか、もう少し詳しく見てみよう。
半導体の生産原価を決める主な要因の1つは、微細化技術である。1つのウェハーからもっと多くの製品が生産できれば、生産原価は下がることになる。そのため、半導体会社の競争力を論じる際には、この微細化技術を比較する必要がある。
サムスン電子は、そのような意味において、競合を一歩リードしている。SKハイニックスの微細技術の主流は25ナノで、来年には21ナノの量産体制になる。その反面、サムスン電子はすでに、世界で初めて18ナノの微細化技術の開発を成功し、18ナノを適用した量産体制になっている。
一方、マイクロン微細技術のレベルはいうと、30ナノくらいのレベルである。マイクロンの苦戦は、これで説明ができる。マイクロンの凋落を良い機会に、DRAM市場に積極的に参入しようとしているのは、中国である。中国はDRAM分野に莫大な投資を敢行し、2018年にはDRAMの大量生産が予定されている。ところが、中国で進められているDRAM生産設備の微細化技術はというと、32ナノレベルである。
10ナノクラスの工程を適用したDRAMは、既存の製品に比べ1枚のウェハーで30%以上多くの製品が生産できるので、原価を下げるのに大きな効果がある。性能面においても、18ナノの製品は既存の製品に比べ、容量では50%、スピードでは30%も向上している。
こうしたことも考えると、サムスン電子の微細化技術は他社に比べ2~3年先行しており、異変がない限り今後も独走が予想されている。このような趨勢は、統計にも如実に現れている。サムスン電子は昨年、DRAM市場で46.7%のシェアを占め、過去最高を記録した。
もう1つは、DRAM市場の多様化に、各社がどのように対応したかである。メモリ市場は大きく分けると、DRAMとNAND型フラッシュメモリ(以下、NANDフラッシュ)とに分けることができる。NANDフラッシュは通常のメモリと違って、電源を切っても、記憶情報が消去されないという特徴を持つ。
既存の記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)に比べ、NANDフラッシュを使った記憶装置は、処理速度が10倍も速い。そのため現在、SSDというNANDフラッシュを使った製品がHDDを代替しつつある。
それだけでなく、SSDもスマホもサーバーも高容量化が進んでいて、NANDフラッシュに対する需要は堅調である。サムスン電子は、DRAMの比重を下げつつ、NANDフラッシュの比重を高めている。SKハイニックスとマイクロンは微細化技術だけでなく、次世代の成長エンジンであるNANDフラッシュにおいても,サムスンには歯が立たない。
さらに、サムスン電子は、DRAMの納入先の多様化も行っている。成長が鈍化しているPCの比重は減らし、モバイルとサーバー分野に素早くシフトしている。その結果、サムスン電子のPC用DRAMの比重は、DRAM全体の10%に過ぎない。
このような状況になっているため、サムスン電子はDRAMの価格下落が続いても、大幅な利益減少に見舞われずに済んでいる。最後に、サムスン電子は、NANDフラッシュの微細化技術の壁を乗り越えて、セルを垂直に積層することで、大容量化を実現した3D NANDフラッシュの開発にも拍車をかけている。NANDフラッシュの場合、現在のところ、東芝と激しい競争を繰り広げているが、そのようななかでサムスン電子は今月、アメリカで第4世代の3D NANDフラッシュを発表した。アメリカのサンタクララのコンベンションセンターで発表された新製品は、64段を積層したもので、今年の第4四半期に出荷を予定している。
以上、見てきたように、DRAM市場に大きな変化が起きようとしている。それは、寡占体制の崩壊と中国の台頭である。中国のメモリ市場参入は、今後DRAM市場に大きな変化をもたらすことは間違いない。
半導体は装置産業であり、良い装置さえ導入すれば生産できる側面があることは否定できないが、工程技術の改善というもう1つの要素もあるため、それほど簡単にキャッチアップされないという指摘もある。しかし今後、中国の新規参入によって、業界再編が起こることは間違いない。
(了)
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