マシュマロを極めた自信と手応え、革新する経営術は次代にも継承(後)
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(株)石村萬盛堂
大都市圏の声かけもあり、噴出した工場のHACCP認証
マシュマロについては、「こんな商品をつくってくれないか」というオファーが多く寄せられているという。ただ、石村萬盛堂が追求するマシュマロは、口触りが良く口の中でトロッと溶けるのが理想だ。
しかし、それを実現すると日持ちがしない。工場から出荷され、駅、空港、高速道路の売店に商品が並び、お客さんが実際に手にするまでにはリードタイムがある。
飽くなき高品質の追求と賞味期限の短さ。相反する問題の解決は容易でないが、1つの商品を極めてきたことが同社の可能性を大きくしたのも、また事実である。
「大都市圏の市場からの声かけもあり、当社のマシュマロが美味しいので、ぜひ商品化したいとのこと。ただ、工場検査が非常に厳しく、HACCPの認証を取らなければなりません。工場がまだ基準に達しておらず、より高い工場整備が喫緊の課題です」。石村社長は、「菓子屋は大きゅうしたらいかん」との家訓に挑戦するかたちで、直営店展開や近代工場の建設に乗り出し、味を維持しながら売上拡大を成し遂げた。「全需要対応型というあらゆるお客さまのニーズにお応えできる『いしむら』の展開は発想としては良かったし、それで売れるモデルができましたが、生産効率は決して良くありません。全体の売上げは最盛期に比べて1割は低下しています。それでも、赤字店は1店もありません。最初に考えたことは正解だったと思います」。
創業100周年に導入したNPSにメスを入れ、消費税増税を機に商品にも価格訴求型、プレミア型とメリハリを付けたことが確実な成果を生んでいる。次なる戦略では、工場のHACCP認証がテーマになる。
権限委譲、事業継承は誰に、卸の拡大が次期経営者の課題
石村社長は今年で68歳になる。31歳で社長に就任し、経営者として30数年が経過。権限委譲や事業継承が頭をもたげ始めている。
米国留学、大手広告代理店勤務を経て入社した次男の慎悟氏が、営業展開では手腕を発揮しつつあるようで、メディアの取材を受けるケースも増えている。ここに来て長男で公認会計士を務める善之亮氏も入社に前向きであり、すでに経営会議には参加しているという。「長男は小さい頃からお菓子に対する感性では良い物を持っていましたし、入ったら商品開発がしたいと言っています。親の目から見ると、『桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す』の通り、頭領の雰囲気は自然に携わっているような感じです。次男は『僕1人ではしきらんよと』言っていますが、兄弟で仲良くやることです。ただ、長男が入社してくれるのは嬉しい反面、古参の社員のことも考えなければならないと思っています」。
店舗展開では、ショッピングセンター(SC)出店を解禁し、イオンの小郡と筑紫野の2店舗を展開。筑紫野店の売上はライバル店もあるため直営よりは劣るが、小郡店は好調な業績を誇る。
だが、今のところはSC出店のノウハウが確立しておらず、店舗フォーマットづくりが急務となる。そして、もう1つが、成長著しい海外市場への進出だ。同社はマシュマロの製造技術に関してはどこにも負けないとの自負がある。まずはこれを活かして、国内のみならず海外への卸展開で攻めていくことになりそうだ。石村社長は、これらについては次期経営者のテーマに位置付けているようで、権限委譲や事業継承が行われた時点で、石村萬盛堂は更なる革新経営に臨むことになる。
(了)
<COMPANY INFORMATION>
代 表:石村 僐悟
所在地:福岡市博多区須崎町2-1
創 業:1905年12月
資本金:9,500万円
TEL:092-291-2225
URL:http://www.ishimura.co.jp<プロフィール>
石村 僐悟
1971年、東京大学経済学部卒業後、(株)石村萬盛堂入社。79年、3代目として代表取締役社長に就任。その後、洋菓子「ボンサンク」、和洋菓子の総合店「いしむら」を展開し軌道に乗せたほか、ホワイトデーの提案等、自社のみならず業界全体における革新的な取り組みを行っている。趣味は謡曲と読書。法人名
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