空売りファンドが日本に上陸。最初の標的は伊藤忠商事(後)
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次に狙われた医療用ロボットのサイバーダイン
伊藤忠に続いて、空売りファンドの標的になったのは、東証マザーズ上場のロボットスーツ「HAL」を開発した筑波大発のベンチャー企業、CYBERDYNE(サイバーダイン)(株)。仕掛けたのは、同じ米国の空売りファンドのシトロン・リサーチだ。
シトロンは8月16日の取引開始前に、サイバーダインのいずれの製品も効果的に商業化するに至っていないとするリポートを公表。目標株価を300円(8月15日の終値2,077円、85%の下落リスク)に設定した。このリポートを受けて、8月16日のサイバーダインの株価は一時、11%安の1,852円まで下げた。
サイバーダインは「扇情的な表現や当社を不当におとしめる品位に欠けた表現が多数用いられている」として、「事実誤認」だと反論している。
東芝の不正会計が、空売りファンドを招いた
投資ファンドは、栄枯盛衰の激しい業界だ。2000年代半ば頃は“アクティビストファンド”(もの言うファンド)が一世を風靡した。代表的なのは、米投資ファンドのスティール・パートナーズ。スティールは株を買い占めて筆頭株主となり、TOB(株式公開買い付け)による買収を要求したり、経営陣の全面刷新を求めたりするなど、会社側に経営改善を強く要求してきた。
スティールは、サッポロホールディングス(株)や日清食品ホールディングス(株)など、ピークの07年には30社前後に揺さぶりをかけていた。だが、08年のリーマン・ショックによる世界的金融危機で、資金パイプが詰まり、全株を売却して日本株から撤退した。
安倍晋三政権の金融緩和政策によって、アクティビスファンドが出番を迎えた。著名な投資家ダニエル・ローブ氏が率いる米サード・ポイントは、(株)セブン&アイ・ホールディングスに、業績が低迷している総合スーパーの(株)イトーヨーカ堂や百貨店(株)そごう・西武の分離を要求した。
15年に(株)東芝の不正会計が発覚。これをビジネスチャンスと捉えたのが、新興の空売りファンドだ。日本の上場企業は、叩けばホコリが出るところがゴロゴロあると踏んだ。一儲けできると踏んで、日本に上陸してきたわけだ。
株価の下落が大きいほど、空売りの利益は膨らむ。だから、リポートで「火のないところで、煙を立たぬ」と思わせて、極端に低い目標株価を設定する。外資系ファンドは、かつて経営が悪化した企業を貪ることから、“ハゲタカファンド”と呼ばれた。空売りファンドは、風説の流布をメシの種とする“ゴシップ型ファンド”と言えそうだ。
(了)
【森村 和男】
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