リガにはアールヌーボーのビル群がある
モノクロームな工業化の進行に抵抗して、中世への回帰をテーマに生まれたというアールヌーボー。それは絵画や工芸品だけでなく、ビルのデザインにも反映された。そのビル群が残るのが、ラトビアの首都・リガであり、これらビル群は「ユーゲントシュティール」と呼ばれる。
![]() アールヌーボーのビル群 | ![]() 石づくりに歴史と文化が漂う |
とくにミハイル・エイゼンシュテインの作品は、その奇抜な斬新性で評価が高い。ミハイルは、映画史上屈指の名作として名高い「戦艦ポチョムキン」の監督で有名な、セルゲイ・エイゼンシュテインの父親である。セルゲイは、この地で生まれた。
蛆が湧く肉でつくったスープを飲まされるなど、劣悪な艦内生活に激怒した水兵たちが起こす反乱映画は、後にソ連のプロパガンダ映画として利用されただけでなく、その撮影手法が有名だ。その「戦艦ポチョムキン」は、団塊の世代が成人する半世紀近く前、我が国でも公開された。私も田舎から東京に出て間もない頃、砲塔と水兵が描かれたポスターに、単なる戦争映画を連想したことを覚えている。
ミハイルは、後世に大きな影響を残す撮影技法だけでなく、数々の特異な言動と行動、さらに風貌で有名だが、父親のミハイルも相当の変わり者(?)だったことは、ビルのデザインを見ればよくわかる。ビルにはたくさんの顔が彫刻されているが、その顔つきはとても普通とは言い難い。
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“億ション”もあるでよ
これらのビルは現在、再利用が進んでいる。その価格は、日本円にして軽く“億”を超すという。駐車場なしの“億ション”が売れるということは、やはり我々の常識の物差しとこの国のそれは違うことを実感する。
![]() ユニークなデザインのアールヌーボーのビル群 | ![]() 駐車違反を取り締まるパトカー。通りは狭く、ビルには駐車場がない |
(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。